主に以下の3点について検討を行った.①花被の地色および斑点形成に関与する遺伝子の機能解析:アントシアニン生合成に関する2つの転写因子 (R2R3-MYB) の遺伝子 (TrMYB1およびTrMYB2) についてRNAiコンストラクトを構築し,ホトトギス類の形質転換を行なった.2022年度,TrMYB1のRNAiコンストラクトを導入した形質転換体が開花に至った.それらの形質転換体の花被においては,地色形成が大きく抑制されており,一方で斑点形成にはほとんど変化がみられなかった.内生遺伝子の発現解析を行ったところ,TrMYB1およびアントシアニン生合成酵素遺伝子の発現は低下していたが,TrMYB2の遺伝子発現には大きな変化はみられなかった.これらの結果から,花被の地色形成と斑点形成が異なるR2R3-MYB遺伝子により制御されていること,および地色形成がTrMYB1により制御されていることが明らかとなった.今後,TrMYB2のRNAiコンストラクトを導入した形質転換体が開花すれば,花被の斑点形成に関するさらなる知見が得られると期待している.さらに,現在,ゲノム編集による機能解析を行うために,両遺伝子のCRISPR/Cas9コンストラクトを導入した形質転換体を育成中である.②花被の地色および斑点形成に関与する遺伝子のプロモーター解析:TrMYB1およびTrMYB2のORF上流域にGUSレポーター遺伝子を連結したコンストラクトを構築し,それらが導入された形質転換体を育成中である.③RNA-seq法による斑点形成に関与する遺伝子のスクリーニング:これまでと同様,2022年度にも色素形成とは無関係の遺伝子が多数スクリーニングされた.今後は,遮光処理した花蕾ではなく,TrMYB1のRNAiコンストラクトを導入した形質転換体の花蕾をサンプルに用いる予定である.
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