| 研究課題/領域番号 |
19K06029
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| 研究機関 | 静岡大学 |
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研究代表者 |
八幡 昌紀 静岡大学, 農学部, 准教授 (60420353)
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| 研究分担者 |
下川 卓志 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 物理工学部, 研究統括(定常) (20608137)
松山 知樹 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (30291090)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | イオンビーム / 果樹 / カンキツ / DNAマーカー / 突然変異育種 |
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| 研究実績の概要 |
本研究では、我が国の代表的な果樹であり、突然変異により品種群が形成されているカンキツ類の重粒子線照射による突然変異育種を推進させるために、キンカン種子に重粒子線を局所照射し、核種および吸収線量の違いが実生の生存率、成育および変異に及ぼす影響について調査した。
放射線医学総合研究所の重粒子線がん治療装置（HIMAC）を用いて重粒子線照射を行った。種子への照射実験では、ニンポウキンカンとマメキンカンを用い、炭素（C）、ケイ素 （Si）、アルゴン（Ar）および鉄（Fe）の4種類の核種を0、5、10、25、50および100Gyの吸収線量で照射した。
発芽調査の結果、吸収線量の増加に伴い発芽のタイミングに遅れが生じ、発芽率も低下した。さらに、元素種の種類によっても差が認められ、ニンポウキンカンでは、C25Gy照射区で発芽率が62.5%であったのに対し、Fe25Gy照射区では発芽が見られなかった。マメキンカンでは、C25Gy照射区で発芽率が58.3%であったのに対し、Fe25Gy照射区では10.4%となった。また、発芽率50%減少値（播種後15週時点の発芽率が無照射区の半分の値のときの吸収線量）は、ニンポウキンカンでは照射元素の原子番号が大きいほど値が小さくなり、マメキンカンでも原子番号が最も大きいFe照射区で最も小さかった。次に、実生の生育調査を行った結果、樹高は吸収線量の増加に伴い低くなった。展葉数と節間長は多くの照射区で吸収線量の増加に伴い値が低下した。なお、イオンビー ム照射が発芽や実生生育に及ぼす影響は、ニンポウ キンカンの方が顕著に表れた。以上より、キンカン種子への重粒子線照射では，元素種や吸収線量の違いによって影響が異なり、元素の原子番号が大きいほど、加えて吸収線量が高いほど発芽率や実生成育が低下することが明らかになった。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、我が国の代表的な果樹であり、突然変異により品種群が形成されているカンキツ類の種子や珠心胚実生の胚軸に重粒子線を局所照射し、核種と吸収線量の違いが実生の生存率、成育および変異に及ぼす影響（実験Ⅰ）、誘導された突然変異体における形態・形質の安定性（実験Ⅱ）、そして突然変異体と野生型との識別DNAマーカーの開発（実験Ⅲ）の3つの実験内容を研究期間内に行う予定である。
研究2年目である本年度では、様々な核種の重粒子線を種子や実生に照射後、それらの生存率や葉の形・色、植物体の生育の変異についてデータを採集し、葉等に変異が顕著なものは理化学研究所に送り、識別DNAマーカーの開発も同時に行うことを計画した。キンカン種子への分子量の異なる重粒子線を照射した結果、分子量が大きい核種の重粒子線を照射すると種子の発芽率は低下し、照射個体の生育は照射強度に依存しており、高いほど生育が劣った。そして、生育の悪い個体では奇形葉を有するものが多く認められ、複数の突然変異候補個体として選別することができた。
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| 今後の研究の推進方策 |
照射条件の設定（高精度化した照射実験系の確立と再現性の確認）を進めるために，令和3年度も引き続き，静岡大学で採取した種子および育成した実生を放射線医学総合研究所に送り，重粒子線を照射する．本年度のキンカン種子への照射実験で，分子量が大きい核種の重粒子線を照射すると種子の発芽率は低下し，そして照射個体の生育は照射強度に依存し，高いほど生育が劣っていたことから，令和3年度ではウンシュウミカンをはじめとするカンキツ種子にも同様の照射実験を行い，核種と吸収線量の違いが発芽率や実生の生育および変異に及ぼす影響について調査し，より詳細なデータを収集する．そして，これらの照射個体の形態調査を行い，非照射体と比較して形態が変異し，その変異が安定しているものを突然変異体の候補とし，それらの一部（葉等）を理化学研究所に送り，突然変異体と非照射体との識別DNAマーカーの開発を試みる．また，本研究課題初年度に行ったマメキンカンの照射個体において開花結実するものも認められた．これらの花や果実の形質についても調査を進めていく。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大に際して、拡大防止措置として研究活動が制限されたため当初予定していた実験（重粒子線照射）を遂行することができず、さらに学会等での成果発表を行うことができず、物品費や旅費等で未使用額が生じた。次年度は、重粒子線照射や突然変異体と非照射体との識別DNAマーカーの開発のための物品費や、研究打ち合わせや学会発表のための旅費として使用していく予定である。
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