研究課題
本研究課題では,ノビレチンを多く蓄積するカンキツ品種とほとんど蓄積しないカンキツ品種の果皮を用いてマイクロアレイ解析を行うことにより,ノビレチン生合成を調節する転写因子を単離する。単離した転写因子の機能解析を行うことにより,カンキツ果実におけるノビレチン生合成に関わる遺伝子の発現調節機構の解明を目的とする。令和2年度は,ノビレチンを多く蓄積する‘太田ポンカン’ および ‘カンキツ中間母本6号’(キングマングリンと無核紀州の雑種)とほとんど蓄積しない‘宮川早生’の果皮を比較してマイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析の結果から,グリーンステージのカンキツ3品種のフラベドには106個のO-メチルトランスフェラーゼ(OMT)遺伝子が検出された。その中で,4個のOMT遺伝子の発現パターンは品種間におけるノビレチン含量の違いとよく一致しており,ノビレチンの生合成に関与する可能性があることが示唆された。本年度は,CitOMT2の全長を単離し,大腸菌を用いてリコンビナントタンパク質を発現させ,in vitroにおいて機能解析を行った。CitOMT2の機能を調査するため,本研究では4種類のフラバノン,5種類のフラボンおよび1種類のイソフラボンを基質として酵素の反応を調査した。CitOMT2と7,8‐ジヒドロキシフラボンを反応させたところ,新規生成物は検出された。さらに,CitOMT2と7‐ヒドロキシフラボンを反応させたところ,新規生成物は検出されなかった。また,MSの結果から,新規生成物はモノメトキシ化合物であることが示唆された。以上のことから,CitOMT2はカンキツにおいてフラボンの8位の水酸基をメチル化する酵素であることが示唆された。この遺伝子機能の解明により,ノビレチン生合成経路をさらに明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度は,ノビレチンを多く蓄積する‘太田ポンカン’ および ‘カンキツ中間母本6号’とほとんど蓄積しない‘宮川早生’の果皮を比較してマイクロアレイ解析を行った。その結果,グリーンステージのカンキツ3品種のフラベドには106個のOMT遺伝子が検出された。そのうち,‘宮川早生’と比較して,‘太田ポンカン’では5個のOMT遺伝子の発現が2倍以上上昇し,‘カンキツ中間母本6号’では6個のOMT遺伝子の発現が2倍以上上昇していた。‘太田ポンカン’と‘カンキツ中間母本6号’2品種で共通して2倍以上上昇した遺伝子が4個あった。さらに,大腸菌を用いてCitOMT2のリコンビナントタンパク質を発現・精製したところ,SDS-PAGEにおいて約40kDaのシングルバンドが得られた。様々なフラボノイド基質を用いて精製されたリコンビナントタンパク質と反応させ,反応生成物を検討した。機能解析の結果から,CitOMT2はフラボンの8’位の水酸基をメチル化する反応を触媒し,カンキツ特有のPMFであるノビレチンの生合成に関与することを明らかにした。以上のように,概ね計画通りに研究が進んでおり,進歩状況は順調である。
令和3年度は,令和2年度で単離した機能未知の他のOMT遺伝子の発現変動を調査する。また,大腸菌を用いてOMTのリコンビナントタンパク質を発現させ,in vitroにおいて機能解析を行い,ノビレチン生合成経路をさらに明らかにする。さらに,ノビレチンを多く蓄積する ‘太田ポンカン’および‘カンキツ中間母本6号’とほとんど蓄積しない‘宮川早生’の果皮を用いてマイクロアレイ解析を行うことにより,ノビレチン生合成を調節する転写因子を単離し,機能解析を行う。
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Scientific Reports
巻: 10 ページ: 15288(1-11)
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Applied Science
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10.3390/app10248916