研究課題/領域番号 |
19K06032
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宇野 雄一 神戸大学, 農学研究科, 教授 (90304120)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ストレス / 野菜 / 耐性 / 転写因子 / プロモーター |
研究実績の概要 |
植物のストレス応答の代表的な経路はDREB遺伝子を介している.これまでに,レタスのDREB転写因子が,ストレス応答に関わる遺伝子群の転写を活性化し,耐性を付与することを解明してきた.しかしながら,LsDREBに調節を受けるレギュロンのプロモーターや,LsDREBのパラログの解析は進んでいない.これらの関係性が明らかになれば,ストレス応答機構の全体像が見え,ストレス耐性レタスの分子育種が期待できる.そこで本研究では,レタスのストレス応答に関わるLsDREB遺伝子のパラログ,並びにレギュロンのシスエレメントを解析することを目的とした.本研究成果により,非ストレス時の生育が抑制されず,温暖化等による異常気象にも対応が可能な実用性のある品種育成が期待できる. 2年目は次の3項目について研究を進めた. (1)LsDREB1パラログの整理と発現解析:14種類のLsDREB1パラログを同定し、短期間(0,0.5,1,3,5,10,24時間)および長期間(7日間)のストレス時の発現解析を行った. ほぼすべてのパラログが低温ストレスに応答し,一部が浸透圧ストレスに応答して発現を上昇させた. (2) LsDREB1レギュロンのプロモーター解析:レギュロンのひとつであるLSDHNを対象として,ストレス時の発現量が高く,プロモーターに複数のDREを持つパラログを選択し,プロモーター::GUSキメラ遺伝子のコンストラクトを作成した.アグロバクテリウムを介して導入した形質転換体T1を獲得した. (3) LsDREBパラログおよびレギュロンプロモーターの結合解析:すべてのLsDREBパラログについて,酵母ワンハイブリッドシステムのコンストラクションを終えた.またLSDHNのプロモーターを導入したレポーターストレインを作成した.パラログによって結合特性に差があることを確認し,再現性を調べている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開始当初の予定では,(1)LsDREB1パラログの整理と発現解析,(2) LsDREB1レギュロンプロモーター解析,(3) LsDREBパラログおよびレギュロンプロモーターの結合解析の項目について、2年目終了時に70%程度の達成度を見積もっていた.自己評価では,(1)が80%,(2)が60%,(3)が70%と、おおむね順調に結果が得られた.また,レギュロンとしてはLEAタンパク質のみが研究対象であったが,1年目終了時には,乾燥耐性に関与するアラントイン合成系の酵素遺伝子xanthine dehydrogenase (XDH)およびallantoinase (ALN)を追加した.それぞれの遺伝子のプロモーター配列にはDREが存在することを確認している.ALNについては,形質転換体や組み換えタンパク質を使用した機能解析を始めている.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる3年目は,(1)LsDREB1パラログの整理と発現解析,(2) LsDREB1レギュロンプロモーター解析,(3) LsDREBパラログおよびレギュロンプロモーターの結合解析の項目について100%の達成度を目指す.選択したストレス応答性プロモーターとパラログの組み合わせのコンストラクションの作成までを目標としているが,できれば形質転換体T0を獲得したい.追加した研究項目のアラントイン合成系についても, 発現解析によりDREBとの関連性を明確にしたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた8月の国内学会ならびに11月の国際学会が、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため相次いで中止となり、旅費を使用できなかった。次年度の予算に持ち越し、消耗品や試薬を購入する予定である。
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