CRISPR/Cas9を利用したゲノム編集は取り扱いが簡便なことから、様々な生物種のゲノム編集に適用されており、実用化も世界規模で進められている。本研究ではリンドウ等の園芸作物を対象に、アグロバクテリウムを介してCas9およびguide RNAを植物細胞内で一過的に発現させることでゲノム編集を可能とする外来遺伝子組み込みフリーの系の確立を目指している。 これまでに分化速度の速いタバコを材料に研究を進め、選抜薬剤フリーの条件下でフラボノイド合成酵素遺伝子(NtF3H)がゲノム編集されたカルスを複数選抜した。しかしながら、これらのカルスから得られた全てのシュートでは当該遺伝子の配列が野生型に復帰していた。選抜薬剤フリーの条件下であることから、ゲノム編集された細胞が周囲の野生型の細胞に押し負けたことや、サンプリングを行った部位以外ではゲノム編集がされていないことなどが考えられた。より高効率でゲノム編集することが重要となると考え、令和3年度はリンドウで高効率かつ選抜薬剤フリーの系でゲノム編集が行える条件を探索した。ゲノム編集の有無を簡便に判定するために、GFP過剰発現リンドウのGFP遺伝子をゲノム編集の対象にした。先ず、新たに設計したGPFをターゲットとするguide RNAを用いて、GFP過剰発現リンドウのGFP遺伝子をゲノム編集できることを確認した。次いで、様々な条件下でゲノム編集が起きる条件検討を進めたが、劇的に効率が改善される条件を決定するには至らなかった。
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