温暖化の進行により被害が深刻化するカンキツかいよう病の抵抗性品種の開発に向けて、ポンカン等にみられるカンキツかいよう病圃場抵抗性の原因物質であるリナロールが抵抗性品種で高含有化されるメカニズムを明らかにする。高含有化の鍵となる原因遺伝子の同定により圃場抵抗性を有するカンキツ新品種の開発に 結びつく新規知見を獲得する。 本研究では、ポンカンの実生後代を用いてGRAS-ID法を用いて高密度遺伝子地図を作成し、関連遺伝子の遺伝子座、カンキツかいよう病抵抗性、リナロールの高含有化に関わるゲノム領域をマッピングし、その相関を明らかにする。また、リナロール高含有化に関わる遺伝子の同定するために、カンキツの公開ゲノム配列を基にリナロール含有量がマッピングされたゲノム領域中の予測遺伝子から、リナロールの生合成や代謝に関わる候補遺伝子を選抜する。 さらに、リナロールの含有量が高いポンカン、含有量の低い「はれひめ」、及びその実生後代の葉における関連遺伝子のRNA-SEQによるトランスクリプトーム解析を行い、高含有個体と低含有個体の間で有意に発現変動する遺伝子を選抜する。令和4年度はQTL解析とRNA-SEQ解析で重複する候補遺伝子について、定量PCRで発現量を評価したところ、dehydration stress family proteins、glutamyl-tRNAGlu reductase、TPL-binding domain protein、linalool synthase、 1-deoxy-D-xylulose 5-phosphate synthaseつがリナロール高含有品種で有意に高いことが確認できた。これらの候補遺伝子は、ポンカン等のリナロールの高含有品種において、高含有化に寄与する遺伝子である可能性が高いと考えられた。
|