研究課題/領域番号 |
19K06042
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
柿崎 智博 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, 上級研究員 (30547229)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ダイコン / サヤダイコン / 種子 / 生産性 |
研究実績の概要 |
ダイコンは一莢から得られる種子数が少なく、品種の育種過程や販売用種子の採種現場で潜在的なコスト要因となっている。本研究ではダイコンの種子生産性の向上を最終的な目的とし、その達成に必要な基礎的知見を得る。具体的には、インドやタイなどで若莢が食用とされているサヤダイコンが持つ一莢あたりの多粒性に着目し、その遺伝性の解明とそれを支配する染色体領域の同定を行うことを最終目標としている。 本年度は、多粒性を有するサヤダイコン系統の一つであるSD93-50と日本型ダイコンの自殖系統であるPL5(少粒性)とのF2交雑集団の形質評価を行い、QTLマッピングによる遺伝子座の同定を試みた。その結果、第6染色体末端に一莢粒数に関与するQTLが検出されたが、PL5に由来するQTLであった。 次に上記の2系統の正逆交雑から得られたF1について、胚珠数を計測することにより、胚珠数に与える母性効果の有無を検証した。その結果、F1の胚珠数は性逆組合せ間で有意差が認められなかったことから、細胞質による効果は無いものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)一莢粒数に関与するQTLの同定 遺伝解析にはサヤダイコンSD93-50と自殖系統PL5のF2分離集団150個体を用いた。分離集団と親系統およびF1個体を同一ハウスに定植し、ミツバチによる交配により得られる種子数を調査した。S遺伝子が与える種子形成効率への影響を低減するため、ハウス内に解析集団とは異なるF1品種4品種とサヤダイコン4系統を定植した(各7個体)。形質評価は、結実後の「莢あたり種子数」および開花前日の「子房あたり胚珠数」について実施した。 各F2個体の胚珠数と種子数については正の相関が見られ(r=0.72)、両形質ともに連続的に分布した。また、分離集団の中に親系統を超越した個体は出現しなかった。 F2集団の各個体についてddRAD-Seqにより多型を抽出し連鎖地図を構築した。次に一莢粒数を形質値としたQTL解析を実施したところ、一莢粒数に関与するQTLが第6染色体末端に検出された。しかしながら、このQTLの効果を詳細に解析したところ、一莢粒数が多いSD93-50ではなく、PL5の対立遺伝子が粒数を増加させる効果を持つことがわかった。 (2)母性効果の検証 SD93-50を含む3系統のサヤダイコンとPL5の正逆交雑により得られたF1の胚珠数を調査した。いずれの組合わせにおいてもサヤダイコンの細胞質による種子数への母性効果は認められず、本形質は核ゲノムの影響を受ける形質であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
SD93-50以外のサヤダイコンに由来する分離集団を使ったQTL解析を実施する。具体的なサヤダイコン系統ととしてSD91-282を選定した。この系統はSD93-50に匹敵する胚珠数(SD93-50が平均14.1個に対して13.8個)と種子数(SD93-50が平均12.2個に対して10.0個)であることが分かっている。 SD91-282とPL5のF2集団を用いたQTL解析を実施し、一莢粒数に関与するQTLの同定を継続する。 また、SD93-50とSD91-282のF1個体について形質評価を行い、一莢粒数の増加効果の有無について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進捗状況を鑑み、一部の遺伝子解析用試薬の購入および次世代シークエンス解析を見送った。令和2年度に当該試薬を購入する予定である。
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