研究実績の概要 |
本研究では,ハスモンヨトウ由来培養細胞数株を用いて,薬剤耐性に関わる遺伝子を総ざらいに明らかにすることが目的である.ハスモンヨトウ由来培養細胞は,血球由来Sl25細胞,胚子由来Sl45細胞,脂肪体由来Sl63細胞の3株系統を用いた.これら培養細胞株における薬剤化合物を用いた感受性試験を行い,細胞株間において顕著な感受性差が認められたピリダリルを候補とした.ピリダリルにおける作用点は決定打がなく,本薬剤耐性が作用点アミノ酸変異によるものか,解毒酵素ならびに薬剤排出によるものか不明であった.細胞間比較トランスクリプトームでは,薬剤排出トランスポーターの発現は認められなかった.本耐性は,薬剤排出の可能性は極めて低いと考えられた.次に解毒分解に関わる候補遺伝子を得て,CYPXX(遺伝子名は伏せる)とGSTXXX,GSTYYYが候補として挙げられた.次にこれら遺伝子の介在を評価するため,トランスフェクション試薬による遺伝子導入系を構築した.本培養細胞株は一般に普及しておらず,遺伝子発現系の構築も必要とされた.最終的に50%を超えた遺伝子導入効率を達成した.昨年度に計画していたエレクトロポレーション法による遺伝子導入は,本賠償細胞株には適用できなかった.理由として,細胞株が物理的刺激に非常に弱く,エレクトロポレーション法では多くが細胞死を引き起こした.弱パルス条件下では,生細胞が増加する反面,遺伝子の導入は達成されなかった.
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