研究実績の概要 |
前年度は天然由来のエクジステロイド類の活性を,チョウ目昆虫(Spodoptera frugiperda)の細胞Sf9を使って活性を定量的に評価した(Toth et al., J. Nat. Pro., 84, 1870-1881, 2021).その結果,これまで最も活性の高いとされていたPonasterone A (PonA)より活性の高い化合物は見出されなかったものの,昆虫の脱皮ホルモンである20-hydroxyecdysone (20E)よりも活性の高い化合物がいくつか見出された.PonA, 20Eを含めて.pIC50として活性を定量的に求めることができた化合物が10個存在した.そこで,これらの化合物のS. frugiperdaのecdysone受容体(SfEcR)に対するドッキング,分子動力学,さらにMM/PBSAによって結合自由エネルギーを計算した.その結果,活性と結合自由エネルギーとの間に正の相関関係が見出された. また,EcRのリガンド結合部位に結合可能な化合物を化学構造データーベースからソフトウエアLigandScoutを使ってバーチャルスクリーニングを行って,40個の候補化合物を得た.この40個の化合物は基本構造に-CH2=N-NH-C(=O)-を持っていた.われわれのグループは先に,EcRに結合可能な構造としてPh-CH2=N-NH-C(=O)-Naphを見出した (Harada et al., 2011).そこで,今回得られた構造とこれまでに見出した化合物の共通性,さらには植物ステロイドホルモンであるブラシノステロイドの非ステロイド化を目指した分子設計で得られた情報を合わせて,IC50が10 uM程度の新規な化合物を見出した.
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