研究課題/領域番号 |
19K06052
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 千尋 京都大学, 農学研究科, 教授 (60263133)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高浸透圧シグナル応答 / ダイカルボキシイミド / フェニルピロール / 薬剤耐性 / ゲノム比較 / メカニズム |
研究実績の概要 |
Bipolaris maydisが浸透圧や殺菌剤を感知し応答する機構は,糸状菌に共通するSsk1経路とSkn7経路から成り立っている。本菌のイプロジオン・フェニルピロール耐性かつ高浸透圧感受性を示すDic3突然変異株は,その表現型解析からSkn7経路に関連する不全を有すると推定されており,野生型株とのゲノム配列比較の結果,酵母Prp24遺伝子のホモログ上の塩基配列多型がその表現型を支配している可能性を見出した。酵母Prp24はRNAスプライシングソームを構成するタンパク質をコードする遺伝子であり,生存に必須であることが明らかになっている。しかし,酵母以外の菌類でPrp24ホモログはほとんど研究されていない。さらに,各種真核生物のゲノムデータを調べたところ,酵母ならびにその近縁種を除く真核生物ではN末端にHAT配列と呼ばれる反復配列が存在し,その構造は極めて保存的であることが明らかになった。さらにDic3の突然変異はこのHAT配列上に存在している。そこで,B. maydisにおいてDic3の機能ならびにSkn7経路における役割を明らかにするため,主にYeast-two-hybrid法を用い,SKN7あるいはスプライソソーム構成タンパク質との相互作用を調べた。その結果,野生型Dic3はSkn7と相互作用すること,変異型Dic3とSkn7との結合は野生型に比べて著しく弱くなる事が明らかになった。以上より,高浸透圧ストレス応答や殺菌剤作用発現においてSkn7とDic3のと相互作用が必須であること,HAT配列が相互作用のキーになっていることが明らかにできた。さらに,スプライソソーム構成タンパク質Prp3との相互作用も認められ,Dic3はスプライソソームに関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していたYeast-two-hybrid法による解析ならびにB. maydisの遺伝子改変株の作成は予定通りほぼ終了した.
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今後の研究の推進方策 |
B. maydisのSKN7を酵母菌内で発現させた場合,プラスミドコンストラクションによっては,酵母細胞の生育が影響を受けることもわかった,そのため,異なる手法により相互作用の確認も必要であることが判明した.また,予備実験からDic3の破壊は予備実験から致死であると考えれれていたが,その実証のために,Dic3転座株を作成し,交配子孫株の生死ならびにその遺伝子型調査を行おうとした.しかしながら,Dic3転座株を用いた交配実験では,いかなる子孫子嚢胞子も得られなかった.転座させた位置の問題,あるいはDic3とhead-to-headで座乗する遺伝子と協調的な発現制御が必要なためにこの様な不稔性が生じているのか,新たな転座系統あるいは複数遺伝子の転座系統を作製し,解析することを考えている.
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