研究課題
本研究では,ウイルス病における退緑黄化などの症状の発症に関わるメカニズムを明らかにする目的で,人為的に退緑黄化を誘導可能な遺伝子組換えモデル植物,i-amiChlIタバコおよびi-hpHsp90Cタバコを用いて解析した.網羅的遺伝子発現解析の結果から,植物の病害に対する防御応答に関わる遺伝子の発現が退緑黄化の発症と関連していること,さらに葉における加齢依存的な散在性の細胞死が症状の劇症化に関与することを示した.両退緑モデル植物に共通な経路として活性化の顕著なサリチル酸(SA)の退緑黄化発症における役割を明らかにする目的で,SA分解酵素遺伝子(nahG)を導入したタバコを作出した.また,SAによるウイルス抵抗性を抑制することが報告されているCMVの2b遺伝子とその部分欠失変異体を導入したタバコを作出した.nahGおよびCMV 2b発現植物と退緑モデルタバコの交配系統を育成し,これらで退緑黄化が抑制されることを示唆する結果を得た.これらの結果は,SAが病害抵抗性だけでなく,病害の発症においても重要な役割を果たすことを示唆している.そこで,SAの合成や応答に重要な役割を果たすことがシロイヌナズナで示されている転写因子群,SARD1およびCBP60gのタバコホモログについて,薬剤誘導的に過剰発現する遺伝子組換えタバコを作出し,それらがウイルス抵抗反応を促進することを確認した.また,それらの標的遺伝子破壊株の作出を試み,部分的な遺伝子欠損株を取得した.
すべて 2022
すべて 学会発表 (1件)