研究課題
オオムギうどんこ病菌は、光合成を行わない表皮細胞にのみ感染し栄養を吸収する。表皮細胞内には、葉緑体には分化していないプラスチドが存在しており、周辺の葉肉細胞から転流してきた糖をデンプンの形で蓄えている。本菌の侵入により表皮細胞内のプラスチドに含まれるデンプンが消失することを見出しており、そのメカニズムを解明することを目的として、プラスチド局在型のGFP(tpGFP)を発現させた形質転換オオムギ系統を作製してプラスチドの動態解析を行った。侵入部位付近では分散したようなGFP蛍光が観察されたことから、プラスチドが崩壊し、内部のデンプンが露出した後に糖に分解して吸収するのではないかと仮説を立て研究を行った。また、本菌の感染過程のプロテオーム解析により分泌型アミラーゼをコードするAPEC29を同定しており、宿主細胞内のデンプンを分解する酵素の候補として解析した。まず、プラスチドの崩壊を可視化するために、プラスチドに移行してデンプンに結合することが知られているGBSSのC末端にmCherryを融合させたコンストラクトを発現させ観察した。GFP蛍光とmCherry蛍光を同時に解析する実験系の構築に成功し、本菌の侵入部位付近において露出したmCherry蛍光を観察することができた。緑色蛍光を発するプラスチドと比較して明らかにサイズが小さい赤色蛍光が原形質流動に乗って細胞内に分散していく様子が見られ、侵入部位付近で崩壊したプラスチドから流出したことがわかった。APEC29のin vitroでの活性調査を行うため、大腸菌を用いたリコンビナントタンパク質の発現を試みたが、高度に発現はするものの封入体となってしまい、様々な精製方法を試みたが活性測定はできていない。プラスチド崩壊を引き起こす候補因子については複数同定しているがメカニズム解明には至っておらず、引き続き調査を進めている。
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