研究課題/領域番号 |
19K06062
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研究機関 | 公益財団法人岩手生物工学研究センター |
研究代表者 |
小林 光智衣 公益財団法人岩手生物工学研究センター, ゲノム育種研究部, 研究員 (10751539)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アワしらが病 / べと病 / 植物病原菌エフェクター / 葉化病徴 |
研究実績の概要 |
昨年度までに、しらが病菌に感染にともなって、アワの花芽形成にかかわる転写因子であるClass A MADS-boxタンパク質蓄積が減少することが明らかとなったため、これと葉化病徴との関連を解析した。しらが病菌が感染した幼穂では通常は発現していないはずのSVP MADS-box(花成の抑制因子)遺伝子が著しく誘導されている。シロイヌナズナではClass A MADS-boxがSVP MADS-boxの転写抑制することが報告されており、しらが病菌の感染によるClass A MADS-boxタンパク質の減少が、SVP MADS-boxの発現を増加させていることが予想された。そこで、次世代シーケンスしたアワゲノム配列からプロモーターを含むSVP MADS-boxのゲノム配列を単離して解析したところ、MADS-boxの結合配列であるCArGモチーフが複数箇所見つかった。現在、Class A MADS-boxの大腸菌リコンビナントタンパク質を作成し、CArGモチーフを含むシス配列に対する結合を検証している。 葉化誘導因子を含む病原菌因子の単離を目的として、しらが病菌エフェクターの解析を行なっている。しらが病菌に特徴的な遺伝子として見出されたJacalin様レクチン(JRL)に着目した。しらが病菌を接種した葉のアポプラストタンパク質を質量分析した結果、8種類のJRLと近縁病原菌でエフェクターとして報告のあるNLPを含むしらが病菌タンパク質が同定された。ベンサミアーナ葉における一過的発現解析系では、アポプラストに発現させた時のみ、JRLは病原性を促進する機能があることがわかった。ベンサミアーナ葉での局在を確認するために、JRLとGFPとの融合タンパク質を発現させて解析したところ、アポプラストと細胞膜上に局在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
しらが病菌感染にともなうClass A MADS-boxと葉化病徴との関連について解析を行うため、当初はClass A MADS-boxに相互作用するしらが病菌エフェクターの単離を目標としていたが、関連因子の同定には至っていない。いっぽう感染にともなうアワ細胞内でのシグナルについては、これまで行なったRNAseq解析から感染時に顕著に発現誘導されるSVP MADS-boxについて、Class A MADS-boxタンパク質蓄積の低下が関連する可能性がみえてきた。そのため、Class A MADS-boxによるSVP MADS-box転写抑制を解析するための準備を進め、抗Class A MADS-box抗体による内生タンパク質のプルダウン系の確立、大腸菌リコンビナントタンパク質の作成、ゲノム解析によるシス配列の探索を行い、解析に必要な実験系は整備することができた。
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今後の研究の推進方策 |
Class A MADS-boxによるSVP MADS-box転写抑制を解析するために、Class A MADS-boxのリコンビナントタンパク質と候補となるシス配列との相互作用をゲルシフト解析により確かめる。また、抗Class A MADS-box抗体とアワの幼穂抽出サンプルを使ってChIP解析を行い、Class A MADS-boxタンパク質がSVP MADS-boxのゲノム領域に結合しているかどうかを解析する。 JRLについてはアポプラストと細胞膜に局在することが明らかとなったため、それらに焦点を絞って作用機作を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会の中止に伴い、当初予定していた旅費の使用がなくなった。 また、抗体を作成しているが、納品が次年度となったため、物品費の使用が予定額よりも少なくなった。
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