研究実績の概要 |
n=28と考えられるホタルトビケラプライマーペアを本年度作製し、カイコ遺伝子オルソログを含むBACをPCR選抜した。BAC- FISHの結果、鱗翅目昆虫の基本染色体数n=31のうちZならびにChr27に対応する染色体に座上する遺伝子オルソログを除き、複数オルソログのマッピングが実行できた。特異シグナルが認められた97のうち89プローブがカイコ染色体との対応関係を示したことから、カイコタイプのゲノム構成であると判明した。 鱗翅目昆虫のW染色体の起源調査の一環としてヒゲナガカワトビケラ(Sm)に近縁なStenopsyche tienmushanensis (St)のゲノム情報に基づいたヒゲナガカワトビケラとカイコZ染色体の比較研究を開始した。Sm RNAseqデータを再解析し、1,395カイコオルソログからカイコZ遺伝子34を選抜した。PCR選抜によりこれらを含む23 Sm BACが獲得できた。これらBAC-DNAをプローブとしてFISHを行ったところ、17がZ、6が常染色体にマッピングされた。マッピングされたそれぞれのBACに含まれるSm遺伝子配列からStコンティグを特定したところ、ZマップBACは15(Zコンティグ)、常染色体マップBACは6コンティグ(Aコンティグ)に集約された。StのZコンティグ遺伝子モデルにおいて比較可能なカイコオルソログのうち、カイコZ遺伝子率は87.8%であった。これに対して、AコンティグのZ遺伝子率は19.6%と、Sm/StでZマップされるカイコオルソログはカイコでもZ率が高く、常染色体マップされるカイコオルソログはカイコでも常染色体率が高い事が判明した。しかしながら、進化的チョウモク昆虫のW染色体由来を特定するには至っていない。なお、本研究によってFISHによる物理マッピングが染色体レベルに満たないゲノム情報の連結に有用であることが示された。
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