これまでの解析から、女王蜂のヘテロクロマチン化が長寿命化に関与にしていることを明らかにしている。また、女王蜂の長寿命化には女王蜂分化誘導因子であるロイヤラクチン/EGFRの下流で幼若ホルモン(JH)が関与している可能性も明らかにした。これまでにミツバチを含む膜翅目におけるJH受容体であるMethoprene tolerant(Met)は未だ同定されていない。そこで、ミツバチのMet及そのCo-factorであるSteroid receptor co-activator(SRC)の同定を試みた。ショウジョウバエ、カイコ、コクヌストモドキ由来Met及びカイコ、コクヌストモドキ由来SRCのORFの配列を基に、ミツバチのゲノムに対するtBlastx解析を実施した。その結果、NCBIにおいてミツバチ(Apis mellifera)には遺伝子アノテーションのミスによりClock遺伝子が2つ存在していることになっており、2つの内の片方の遺伝子がMet(AmMet)であることが分かった。また、SRC遺伝子(AmSRC)は、nuclear receptor coactivator 3と命名された遺伝子であった。さらに、ルシフェラーゼを用いたレポーターアッセイやRNAi試験によりAmMetとAmSRCがJHの下流の転写因子として機能していることを明らかにした。一方で、レポーターアッセイの解析から、時計遺伝子のClockやCycleはJHの下流の因子の転写には関与していないことも明らかとなった。また、AmMetとAmSRCと同様にbHLH-PASドメインを持つ他の転写因子、AmMet、AmSRC、AmClockやAmCycleのアミノ酸配列を基に系統樹解析を実施した結果、同定したAmMetとAmSRCは、Clock、CycleなどではなくMetやSRCのfamilyのそれぞれに属していた。
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