研究実績の概要 |
先行研究において、アオジャコウアゲハ幼虫が頭部にもつ柔らかい突起を、触角による食草探索に補助的に利用するという「食草探索補助」仮説が実証された(Kandori et al.,2015)。同じように頭部に柔らかい突起を持つアサギマダラの幼虫にも食草探索仮説が当てはまるかを調べる検証実験を行った。〔幼虫の頭部突起の有無〕(2処理区)×〔側単眼からの視覚情報の有無〕(2処理区)×〔探索させた植物の茎が食草か非食草か〕(2処理区)=計8処理区を作成し、各処理区に15匹の幼虫を用意して十分なサンプル数の植物探索実験を行った。その結果、植物発見率は(突起有)>(突起無)、(視覚有)>(視覚無)、(食草)≒(非食草)となった。この結果は頭部突起から得られる何らかの情報と側単眼からの視覚情報はともに食草探索に役立っているが、これら2種類の情報は食草か非食草かを識別できていないことを示す。以上の実験結果は先行研究のアオジャコウアゲハ幼虫の研究結果とほとんど同じであり、アサギマダラ幼虫においても食草探索仮説が支持された。 一方先行研究では、ゴマダラチョウ幼虫がもつ硬い頭部突起が天敵であるセグロアシナガバチからの防衛に役立つとする「天敵からの防衛」仮説が実証された。同じように頭部に硬い突起を持つフタオチョウの幼虫においても天敵からの防衛仮説が当てはまるかどうかを調べる検証実験を行った。実験1の野外天敵調査では、鹿児島県奄美大島にて食草のヤエヤマネコノチチに定着させた幼虫を、アシナガバチの仲間が攻撃するシーンを1例のみであるが観察することに成功した。実験2では、5齢突起有り、5齢突起無しの2処理区の幼虫と天敵セグロアシナガバチを使って野外網室にて捕食実験を行った。その結果、アシナガバチの攻撃に対する防衛率は(突起有)>(突起無)となりその差は有意差であった。この結果は仮説を支持した。
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