研究課題/領域番号 |
19K06084
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
東 淳樹 岩手大学, 農学部, 講師 (10322968)
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研究分担者 |
長井 和哉 岩手大学, 農学部, 技術専門職員 (90750472)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ミサゴ / ダム湖 / 巣内カメラ / 外来魚 / 移入放流魚 / GPS送信機 / 水位変動 |
研究実績の概要 |
本来沿岸性の魚食性猛禽類であるミサゴが内陸に生息地を拡大してきている要因として、内陸に建造されたダム湖を新たな生息地としていることが明らかとなってきた。そこで本種の繁殖地としてのダム湖のポテンシャルを評価するために、本種の従来の繁殖地である沿岸部と比較検証した。本研究では、内陸部の巣のほうが、沿岸部のそれよりも、給餌魚の総個体数、総重量が多く、繁殖成績が良いという仮説を立て、内陸部と沿岸部のそれぞれ2カ所において巣内カメラを設置し、給餌魚種の記録を行った。また、それと並行し、ダム湖における本種の狩場環境選択、狩場における魚類の生息状況の調査、繁殖期間の生息地利用実態把握のため、GPS送信機による移動調査を実施した。 全国規模の解析では、ブラックバス密度が高く、湖面積が大きいダムほどミサゴの確認が多いことが示された。餌内容調査では、搬入割合の約45%が外来魚・移植放流魚であり、そのうちオオクチバスは20%を占めていた。また、沿岸部と比較して外来魚確認ダムの方が搬入1回あたりの重量・エネルギー量が優位に優れており、少ない搬入回数でより多くの餌を搬入できていた。以上により、外来魚・移植放流魚が本種の増加の一因あることを明らかにした。 給餌内容調査の結果、ミサゴが巣に搬入した魚類は、育雛ステージによる変動やペア間で魚種の利用割合に差が見られた。これらのことから沿岸部に生息するミサゴにとって、採餌場所の多様性が重要であると考えられる。また、内湾や河口に生息していると思われる魚類の搬入回数が多く、これらの環境は地形的にミサゴが狩りをしやすい環境であると考えられる。 GPS送信機による個体追跡調査では、ダム湖における人為的な水位変動による狩場の状況変化に合わせ、周辺河川を利用している実態が明らかとなった。 以上の結果から、ダム湖はミサゴに良好な生息地を提供していると結論づけられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
内陸部への生息地拡大がみられる魚食性猛禽類ミサゴについて、内陸の巣のほうが、沿岸部のそれよりも、給餌魚の総個体数、総重量が多く、繁殖成績が良いという仮説を立て、以下の調査を計画した。①給餌魚種把握のために内陸部と沿岸部のそれぞれ2カ所における巣内カメラの設置。②ダム湖における本種の狩場環境選択。③狩場における魚類の生息状況の調査。④繁殖期間の生息地利用実態把握のためのGPS送信機の装着。 いずれにおいて、調査計画を遂行することができ、仮説を支持する結果を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
成果については、学術論文への投稿を予定している。現在も、ミサゴに装着したGPS送信機のデータが送られてきていることから、季節的な移動についてのデータについて解析を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費及び謝金において、不正経理があったため。したがって、次年度は研究遂行ができない。
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