研究課題/領域番号 |
19K06085
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
玉手 英利 山形大学, 学内共同利用施設等, 学長 (90163675)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 外来種 / 遺伝的集団構造 / 系統解析 |
研究実績の概要 |
小笠原諸島は30あまりの島々で構成されおり、大陸とつながったことのない海洋島であるため、多くの固有種が生息しており、その特異な生物多様性から、世界自然遺産に登録されている。しかし、外来種、特にネズミ類による固有種に対する食害が確認されており,外来ネズミ類の駆除あるいは分布拡大防止は重要な課題となっている。本研究では小笠原諸島における外来ネズミ類のさらなる分布拡大を防ぐ方策を考えるための基礎データを得ることを目的として、遺伝学的集団構造解析を行った。2020年度は特に、長年にわたり人間が居住し、ネズミ類が移入・移出する可能性の高い父島と母島を対象としたデータ解析によって、約50㎞離れている両島に生息する外来ネズミ類の起源や移入時期の異同を明らかにすることを具体的目標とした。 14種類のマイクロサテライトDNAを用いた集団構造解析および主成分分析の結果、母島の外来種クマネズミは、父島の一部地域の同種個体と遺伝的距離が近く、ミトコンドリアDNAの系統も同一であった。小笠原諸島にクマネズミが移入したとされている1920年代には,すでに両島にクマネズミが生息していたことが知られている。このことから、侵入初期の段階で、同一起源のネズミが両島に侵入した可能性が高いと考えられる。母島にはクマネズミとドブネズミの2種類の外来種が同所的に生息しているが、2種間での遺伝的交流はなかった。母島および向島のドブネズミのミトコンドリアDNAは、東京,インド,ドイツで捕獲された同種個体と同じ系統に属することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では、現地調査を行う予定であった。しかし、計画策定時(2018年8月)に予想しなかった新型コロナウイルスによるパンデミックが発生し、2019年度、2020年度ともに現地調査は実施できなかった。そのため「遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現時点ではパンデミックが終息する見通しが立たないため、2021年度の研究計画を変更し、年度内に現地調査が実施できない場合には、データ解析と文献調査を中心にして行うことにする。また、データ解析の専門家として2021年度前半に研究分担者若干名を追加する変更を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックにより小笠原諸島での現地調査が中止となったため、旅費および調査用消耗品費の使用がなかったため次年度使用額が生じた。次年度もパンデミックの終息が見込まれないため、調査旅費を計上せずデータ解析で使用する物品の購入費に充てる計画である。
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