研究課題
本研究は、菌株保存が困難な菌根性担子菌培養株の凍結保存法を開発・改良し、この菌群の特性(特に菌根形成能)が維持できる長期凍結保存法を確立することを目的としている。2019,2020年度は、Sato et al. (2020) によって凍結保存法としての有用性が示されているバーミキュライト法の改変法として、液体培地を含ませたバーミキュライトをシャーレに敷いて菌糸を培養し、バーミキュライトごと凍結するシャーレ法に加えて、サンド法、埋め込み法の3つの前培養法によって培養したアカハツ菌株を凍結・復元後にアカマツ無菌実生苗に接種して菌根合成を行った。その結果、シャーレ法を用いた保存株の菌根化率(菌根化した根端数/全根端数)が他の方法に比べて有意に高い結果が得られた。そこで2021年度は,アカハツおよびハツタケの2種3株を用いて、凍結未経験の継代培養株と、シャーレ法および寒天ディスク法(腐生性菌類の凍結保存に一般的に用いられる方法)による凍結保存後の菌株との菌根形成能を比較した。その結果、シャーレ法および寒天ディスク法とも凍結保存後は未凍結の継代培養株に比べて菌根化率が有意に減少すること、その減少は寒天ディスク法よりもシャーレ法で大きく、その傾向はハツタケで顕著だった。一方、菌根の形態(菌鞘やハルティヒネット)は、どの試験区においても野外の菌根と同様であり、凍結保存は菌根形成能の量的な低下を起こすが質的な低下は招かないことが分かった。また、新たな保存法の試行として、宿主植物との培養によって形成させた菌根片を凍結試料とする菌根凍結法をアカハツおよびショウロ株を用いて行ったところ高い生残率が得られた。また、菌類では実施例がほとんどないガラス化法の適用を検討したが、菌根性担子菌株は高張のガラス化液に対して高い感受性を示し、バーミキュライトを培養基剤として用いても低い生残性しか得られなかった。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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