研究実績の概要 |
本研究の目的は、沖縄の建造物等の黒い着色の原因となる気生シアノバクテリアの生態的な情報を得ると共に分離培養と多相分類法による正確な分類を行い、確立した保存株を将来的には公的な株保存機関への寄託を行うことで様々な研究に用いることができる基盤を構築することである。 建造物の黒い着色過程を調べるために、普段人の出入りが無い校舎の屋上に生育実験用の滅菌した石材タイルを設置し、生育状況のモニタリングを開始した。モニタリングは、日射量の多寡で3ヶ所と定期的な水分および培養液の添加処理の4処理の合計12処理区で比較している。6ヶ月が過ぎた段階では、水分処理に関係無く、直射日光の無い処理区で肉眼的な生育が認められてきており、どの様なシアノバクテリアの生育があるか分離培養を始めた。 新型コロナウイルスの影響で初年度の石垣島・西表島での採集以来、離島での採集を行うことは控えているが、代わりに、校舎の屋上や壁から新たな分離培養を行なっている。確立されている分離培養株からは、16S rRNA領域の遺伝子解析により単細胞タイプでは、GenBankの塩基配列との相同性からChroococcidiopsis, Myxosarcina, Gloeocapsopsis, Cyanosarcina, Aliterella属などに近縁な株が、異質細胞を持つタイプでは、ネンジュモ様の10株は、Desmonostoc, Nostoc, Violetonostoc,近縁な属が無い未記載属の株が、糸状タイプでは、Nodosilinea属の2未記載種(第12回国際藻類学会で発表)、近縁な属が無い未記載属の株などが明らかになっており、それらの株について、16S-23S ITS領域の解析やその二次構造解析を進めると共に形態分類学的な解析を行い、研究発表から論文化を行う予定である。
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