研究課題/領域番号 |
19K06092
|
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
原島 小夜子 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 客員研究員 (50570032)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | オオミジンコ / 内分泌撹乱物質 / 酵母レポーターアッセイ法 / 脱皮ホルモン / 幼若ホルモン |
研究実績の概要 |
オオミジンコは化学物質に対する感受性が高く、化学物質の内分泌撹乱性・毒性の指標として、経済協力開発機構(OECD)の繁殖試験(脱皮回数、産仔数、仔虫の性比)の試験生物に採用されている。この手法は化学物質の個体への影響を直接的に判別する手法であるが、非常に煩雑で熟練の技術が必要であり、供試のためのオオミジンコの前培養期間を含めると、 3週間から1ヶ月程度と長い時間を要する。また、実施可能な研究機関が限定されているのが現状である。 本研究ではオオミジンコに対する内分泌撹乱物質の標的であり、繁殖に重要な脱皮ホルモン受容体(EcR-USP)および幼若ホルモン受容体(Met)を発現する遺伝子組換え酵母を作製した。このアッセイ系は簡便・迅速(2日)に実施可能で、既知リガンドに感度良く応答する。また、これらの酵母株を実際にため池の水などの環境試料のアッセイに用い、酵母レポーターアッセイでリガンド物質の検出が可能であることを示してきた。 以前からオオミジンコに対する内分泌かく乱物質として、様々な化学構造を持つ物質が挙げられてきた。今年度は、これまでに樹立した酵母株を用いて、非脱皮ホルモン・非幼若ホルモン構造を有するものの脱皮異常やオス仔虫誘導活性を示す物質のリガンド活性を調べた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、非脱皮ホルモン・非幼若ホルモン構造を有するものの、脱皮異常・オス仔虫誘導活性を示す物質を用いたレポーターアッセイを行い、各受容体へのリガンド活性の有無を明らかにした。これにより、本研究でこれまでに樹立したアッセイ酵母株が受容体のリガンドと非リガンド物質を明確に区別できることが示された。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに確立した脱皮ホルモン受容体・幼若ホルモン受容体を発現するレポーターアッセイ酵母株を用いて、引き続きオオミジンコに対して内分泌撹乱作用を示す各種化学物質のリガンド活性を調べる。また、本研究で同定した3種類のオオミジンコ特有の応答配列を介した各種リガンドに対する応答を比較し、オオミジンコ生体内での幼若ホルモンとMetを介したシグナル伝達経路の解明にも寄与したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナが5類感染症に移行したものの、実際には感染者急増の第9波も襲来し、研究活動が制限された時期があった。次年度使用額は、これまでに試していなかったリガンド類などの各種試薬や消耗品の購入に充てる。また、これまでの研究成果を学術論文にまとめるための英文校正・出版費用に充てる。
|