研究課題/領域番号 |
19K06098
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
澤畠 拓夫 近畿大学, 農学部, 准教授 (80709006)
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研究分担者 |
早坂 大亮 近畿大学, 農学部, 准教授 (20583420)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 在来アリと外来アリの餌獲得能力の違い / 在来アリと外来アリの餌分配能力の違い / 在来アリと外来アリのコロニーの薬剤感受性 |
研究実績の概要 |
今年の研究では課題の3である,アルゼンチンアリと在来アリとの餌分配能力の差異を明らかにする研究を中心とし,明瞭な結果が得られなかった安定同位体による解析をやめて,アリのコロニーを採取して飼育し,各種実験を行う方法に変更した.まず,アルゼンチンアリが最も薬剤ベイトの影響を受けたという事象を確認するため,兵庫県神戸市の摩耶埠頭およびポートアイランドで,ベイト剤によるアリ類の駆除試験を実施した.そして当該地域に生息する本種および周辺に生息する2種のアリ類(クロヒメアリおよびトビイロシワアリ:いずれもスーパーコロニーを形成する)の集団的な採餌能力と餌分配能力について室内試験を行った.野外実験の結果,薬剤ベイトの施用に対し,アルゼンチンアリのみが顕著に個体数を減少させた一方,クロヒメアリやトビイロシワアリに代表されるその他のアリ類はほとんど薬剤ベイトの影響を受けなかった.これにより同じスーパーコロニーを形成するアリでも、種によって薬剤ベイトに対し異なる応答を示すことが判明した.次に,これらの3種のアリの餌獲得量について室内実験したところ,アルゼンチンアリはトビイロシワアリやクロヒメアリに比べ採餌能力が有意に高く,餌を発見後60分でコロニーメンバーのほぼすべてが餌を獲得するほどであった.餌の分配速度について室内試験を行ったところ,アルゼンチンアリは,単位時間当たりの餌の分配行動(増加速度のピーク)が在来アリ2種と比較して,最も早かった.本研究の結果,スーパーコロニーを形成するアリでも,アルゼンチンアリは在来アリ2種に比べ,餌獲得能力と分配能力が非常に高い性質を有することが明らかとなり,これが,アルゼンチンアリがベイト剤によって効果的に駆除されてしまう現象を説明する重要な要因の一つと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの流行によって野外研究などの展開の遅れを余儀なくされた中でも,1)から3)の各課題については,想定された成果を出してきたものの,学科内の研究室改組による実験室の引っ越し,さらには各種アリの飼育試験を行うに当たり、時間と設備の関係上で制限を受け,アルゼンチンアリとスーパーコロニーを形成する在来種との比較は完了したが、アルゼンチンアリとスーパーコロニーを形成しない在来種間の比較がまだできていないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
現段階において,3の課題であるアルゼンチンアリと在来アリの餌獲得・餌分配能力の違いを明らかにする研究において,アルゼンチンアリとスーパーコロニーを形成する在来種との比較は完了したが、アルゼンチンアリとスーパーコロニーを形成しない在来種間の比較がまだできていない.本研究において社会性の異なるアリの種間で,コロニーレベルでの薬剤感受性を比較するためには,卓越したスーパーコロニーを形成するアルゼンチンアリと,スーパーコロニーを形成しない在来種との比較が必要である.これについては,すでにアルゼンチンアリとスーパーコロニーを形成する在来種との比較は完了しており,新しい実験手法等を用いることはないが,飼育には時間と労力が掛かるため,これを着実に行っていく必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ流行と実験室の移動による遅れと、実験手法そのものに時間がかかることから今年度に終了するはずの研究ができなかった。 今年使用できなかった644,351円は、次年度に、今年度積み残した研究課題について遂行するための消耗品費として、さらに研究成果の報告するための論文掲載料として使用予定である。
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