研究課題/領域番号 |
19K06102
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研究機関 | 滋賀県立琵琶湖博物館 |
研究代表者 |
天野 一葉 (桝永一葉) 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 特別研究員 (50526316)
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研究分担者 |
石橋 靖幸 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80353580)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 遺伝的多様性 / 特定外来生物 / マイクロサテライト / 遺伝的分化 / 保全生態学 / 管理ユニット / 外来鳥類 / 集団の遺伝的構造 |
研究実績の概要 |
特定外来生物のソウシチョウは、近年日本各地の森林に侵入・定着して分布を拡大させ、在来鳥類群集を含めた地域の生態系に深刻な影響を与えている。本研究では、本種を広域な分布拡大期にある森林性外来鳥類のモデル動物として、既存の捕獲技術の改良や遺伝情報に基づいた駆除のための管理ユニットを設定することにより、効果的な管理手法の確立を目指す。本年度は聞き取り調査や野外調査を行い、全国のソウシチョウの生息情報を整理した。また、分析に用いるマイクロサテライトDNAマーカーを増やすために、塩基配列の一部が分かっている6座のマイクロサテライト配列についてPCR法を用いて不明部分の塩基配列を解読した後、繰り返し配列の構成が単純な2座位を選択した。開発済みの15座位とともにアリルの泳動パターンを確認したところ、3座ではアリルの判別が難しい場合があり、分析に用いる座位の数は14となった。多量のサンプルを効率良く分析するため、分析方法を検討した結果、これら14の座は、5回のPCR反応で増幅でき、3回の泳動で遺伝子型を決定できることがわかった。これにより、マイクロサテライトDNAマーカーを用いて、国内各地域集団の遺伝的多様性の多寡や地域集団間の遺伝的交流の程度を明らかにする体勢が整った。さらに、ミトコンドリアDNAチトクロムb領域の塩基配列を遺伝マーカーとして利用することができるかどうか検討した。5種類のPCRプライマーを新規に設計・合成して、近年になって成立した四国の集団に由来する8個体について、チトクロムbを含む領域の塩基配列を決定したところ、遺伝距離の離れた5種類のタイプが確認された。国内の地域集団が成立した時期はわかっていることから、各地域集団にあるチトクロムbのタイプを確認することにより、周辺地域からの個体の移動により、どのように新しい地域集団が成立したのか、その過程が推定できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本のソウシチョウの生息状況についての情報収集や野外調査が進んだ。この研究に用いるDNAサンプルはすでに12地域で採取できている。アリルのデータを得やすいマイクロサテライトDNAマーカーを確定した。複数の座を同時に増やすためのPCRの条件の設定、分析の回数を少なくするためのマーカーの組み合わせについて検討を終えた。新しいmtDNAマーカーも開発を終えた。
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今後の研究の推進方策 |
国内のサンプルの無い地域、少ない地域でソウシチョウの捕獲調査を行う。生息状況・捕獲条件の記録および血液サンプルの採集を行う。14座のマイクロサテライトDNAマーカーについて、各集団あたり30~40サンプルの解析を進める。ミトコンドリアDNA チトクロムbの塩基配列の決定を少数のサンプルについて行い、マイクロサテライトDNAとチトクロムbのデータから、国内の各ソウシチョウ地域集団の成立過程や集団間の遺伝的交流の大きさを推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者とスケジュールの合う日程において天候が悪い日が続いたため、ソウシチョウの繁殖期に捕獲調査を行うことができなかった。また物品費の端数を次年度に繰り越した。そのため、研究費に残金が生じた。次年度の野外調査の旅費および物品費として使用する。
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