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2019 年度 実施状況報告書

草原生態系における指標種群を用いた環境および生物多様性の新規評価手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K06107
研究機関信州大学

研究代表者

大窪 久美子  信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (90250167)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード草原生態系 / 環境評価 / 指標種 / 生物多様性 / 保全生態学 / 蛾類 / 霧ケ峰 / 草原性植物
研究実績の概要

近年、半自然草原における生物多様性の低下が問題となっているが、保全に必要な多様性評価や環境評価の手法はチョウ類等、一部の分類群のみ用いられており、より複雑な生態系を評価し得る新規手法の開発が求められている。また、草原性生物種の減少や絶滅が顕著であるとされているが、例えばチョウ類と同じ鱗翅目の蛾類に関しては、詳しいファウナや草原植生との関係性も明らかにはなっておらず、早急な研究や評価手法の確立が必要である。本研究では、日本を代表する半自然草原を有する霧ヶ峰や阿蘇久住において、生物多様性が高く、指標性に優れていると考えられるが、まだ知見が積まれていない蛾類や甲虫類等の複数の分類群を新たな指標種として選抜し、複雑な草原生態系をより的確に評価する手法を開発し、自然再生および保全策の検討に寄与することを目的とした。
今年度は霧ケ峰高原の立地条件の異なる各地区において蛾類等の群集調査と植生調査の本調査等を実施した。さらに阿蘇久住においては予備調査を実施した。
蛾類は霧ケ峰の草原6地区と森林2地区において489種、11,186個体が確認された。各調査区の蛾類の優占種と食性別の個体数割合は群落優占種や特性を強く反映した。また蛾類群集はTWINSPAN解析で草原と森林地区に分類された。各地区における蛾類群集の組成と構造は群落の構成種に対応することが指摘された。さらに各区における蛾類の個体数と環境要因との相関関係から、複数の環境指標種が提案された。次にアリ類は6地区で4亜科13属27種、5920個体が確認された。アリ類群集は同解析で、草地および森林・草地、低木を含む草地等の4群集型に分類された。指標種候補としては草原性種としてクシケアリ属数種が確認された。鳥類調査では5地区で36種2,258個体が確認された。特に草原性鳥類のノビタキは草原植生が優占する地区で個体数が多く、関係性が強かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度は2019年内においては計画どおりに研究が進んだが、翌年の2020年1月からは国内においても新型コロナウイルスの感染が拡大したため、年度末に予定していた阿蘇久住での予備調査を断念せざるを得なくなった。また3月初旬の日本生態学会が中止となり、Web上での発表として扱われることとなった。生態学会については会場に行けなかったため、研究テーマについて議論を深める貴重な機会を逸してしまったことが残念であった。また、これらの出張について中止したため、予算の執行に変更が生じた。
以上の結果、新型コロナウイルスの感染拡大のため、県外への移動制限が生じたため、研究の進捗状況は一部で遅れている。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策について大きな変更は無いが、新型コロナウイルスの感染拡大によって県外移動が制限されたため、今年度末と次年度4月に阿蘇久住に予備調査に行く計画を見送る結果となった。6月19日以降に県外への移動制限が解除されたため、順次、阿蘇久住への予備調査も開始していく予定である。
しかしながら、今後も新型コロナウイルスへの対応は継続しなければならないため、万全な対策と注意をしながら、本研究を推進していく所存である。

次年度使用額が生じた理由

(次年度使用額が生じた理由)2020年1月からの新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、県外への移動制限が設定され、予定していた学会参加や調査への出張に行くことができなかったため、旅費が使用できず、次年度使用額が生じた。
(使用計画)
次年度使用額は令和2年度請求額と合わせて、調査および学会参加の旅費として使用する。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2020 2019

すべて 学会発表 (21件)

  • [学会発表] 外来植物の草原生態系への影響と植生管理2020

    • 著者名/発表者名
      大窪久美子
    • 学会等名
      日本生態学会第67回全国大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原の異なる植生環境における蛾類群集の環境指標性2020

    • 著者名/発表者名
      田島尚、大窪久美子
    • 学会等名
      日本生態学会第67回全国大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原における鳥類群集と周辺環境との関係2020

    • 著者名/発表者名
      小木曽快、大窪久美子
    • 学会等名
      日本生態学会第67回全国大会
  • [学会発表] 半自然草原におけるアリ類群集の環境指標性評価2020

    • 著者名/発表者名
      植野侃太朗、大窪久美子
    • 学会等名
      日本生態学会第67回全国大会
  • [学会発表] 長野県上伊那地方における異なる植生環境下でのゴミムシ類群集を用いた環境評価2020

    • 著者名/発表者名
      本間政人、大窪久美子
    • 学会等名
      日本生態学会第67回全国大会
  • [学会発表] 国指定天然記念物・踊場湿原におけるオオアワダチソウ優占群落の特性2019

    • 著者名/発表者名
      大窪久美子
    • 学会等名
      2019年度日本造園学会全国大会
  • [学会発表] 霧ケ峰高原におけるフランスギクをはじめとしたキク科外来植物の分布及び群落特性2019

    • 著者名/発表者名
      辻琴音、大窪久美子
    • 学会等名
      植生学会第24回大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原における外来植物のオオアワダチソウが優占する群落への掘り取り処理の影響2019

    • 著者名/発表者名
      大窪 久美子
    • 学会等名
      令和元年度日本造園学会中部支部大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原における異なる刈り取り管理下にある半自然草原群落の組成と構造2019

    • 著者名/発表者名
      大窪久美子
    • 学会等名
      第5回山岳科学学術集会
  • [学会発表] 小規模で異なる植生がモザイク状に配置する緑地環境における蛾類群集の環境指標性2019

    • 著者名/発表者名
      田島尚、大窪久美子
    • 学会等名
      2019年度日本造園学会全国大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原の異なる植生・立地環境における蛾類群集の環境指標性2019

    • 著者名/発表者名
      田島尚、大窪久美子
    • 学会等名
      令和元年度日本造園学会中部支部大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原における蛾類群集と植生環境との関係および環境評価の有効性,2019

    • 著者名/発表者名
      田島尚、大窪久美子
    • 学会等名
      2019年度日本生態学会中部地区大会
  • [学会発表] 小規模で異なる植生環境がモザイク的に配置する大学構内における蛾類群集の環境指標性2019

    • 著者名/発表者名
      田島尚、大窪久美子
    • 学会等名
      第31回日本環境動物昆虫学会年次大会
  • [学会発表] 異なる群落構造の半自然草原と樹叢における蛾類群集を用いた環境評価2019

    • 著者名/発表者名
      田島尚、大窪久美子
    • 学会等名
      第5回山岳科学学術集会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原における鳥類群集と植生および土地利用との関係について2019

    • 著者名/発表者名
      小木曽快、大窪久美子
    • 学会等名
      令和元年度日本造園学会中部支部大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原における鳥類と生息環境との関係2019

    • 著者名/発表者名
      小木曽快、大窪久美子
    • 学会等名
      第5回山岳科学学術集会
  • [学会発表] 半自然草原における環境傾度に応じたアリ類群集の変化2019

    • 著者名/発表者名
      植野侃太朗、大窪久美子
    • 学会等名
      令和元年度日本造園学会中部支部大会
  • [学会発表] 本州中部・霧ヶ峰高原におけるアリ類群集の生物多様性および環境指標性評価2019

    • 著者名/発表者名
      植野侃太朗、大窪久美子
    • 学会等名
      第31回日本環境動物昆虫学会年次大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原におけるアリ類の環境指標性および生物多様性評価2019

    • 著者名/発表者名
      植野侃太朗、大窪久美子
    • 学会等名
      第5回山岳科学学術集会
  • [学会発表] 長野県上伊那地方におけるゴミムシ類の群集構造と環境評価に関する研究2019

    • 著者名/発表者名
      本間政人、大窪久美子
    • 学会等名
      令和元年度日本造園学会中部支部大会
  • [学会発表] 長野県上伊那地方の小スケールでモザイク状の異なる植生環境下における ゴミムシ類の群集構造と環境評価に関する研究2019

    • 著者名/発表者名
      本間政人、大窪久美子
    • 学会等名
      第31回日本環境動物昆虫学会年次大会

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公開日: 2021-01-27  

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