研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、今年度も霧ケ峰高原の立地条件の異なる各地区において蛾類等の群集調査と植生調査の本調査等を実施した。さらに阿蘇くじゅう国立公園においては本調査を蛾類とゴミムシ類群集および植生について実施した。 ここでは霧ヶ峰高原における蛾類とゴミムシ類群集の結果・考察について述べる。2019年から2020年の2年間で蛾類群集の定量的調査では草原8地区と森林3地区の計11地区で実施され、合計593種14,759個体が確認された。長野県および環境省の絶滅危惧種は定性的調査を含み16種が確認され、多様な草原性種が記録された。草原の遷移進行および森林の指標としてウチキシャチホコ亜科とアツバ亜科等、遷移度の低い草原の指標としてカドモンヨトウ族等が抽出された。 霧ヶ峰高原におけるゴミムシ類群集の調査区は草原の6区と森林の2区の計8区とした。なお、各地区の標高は1,500m~1,925mである。群集調査と立地環境調査は2020年4月下旬~10月下旬に実施し、各調査区の個体数等を用いて比較した。さらにTWINSPAN解析より、本分類群の環境指標性を検討した。調査期間中、ゴミムシ類は1科23属57種5,200個体を得た。群集の多様性は全体的に高く、草原と森林間の差異は小さかった。さらにTWINSPAN解析等では、相観的に類似した草原植生であっても、個々の立地環境条件に応じて群集の組成と構造は異なっていた。以上、巨視的には同様な環境下においてもミクロハビタットの差異に応じて、ゴミムシ類群集の組成と構造は異なることが明らかとなった。よって、本分類群は衰退が危惧される半自然草原においても環境指標として有用であることが示された。なお、環境指標の候補としては、先行研究で言及された属や種に加えて、新たにコクロナガオサムシ等は森林、オオキンナガゴミムシ等は草原の指標種として利用可能であることが示唆された。
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