• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

草原生態系における指標種群を用いた環境および生物多様性の新規評価手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K06107
研究機関信州大学

研究代表者

大窪 久美子  信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (90250167)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード草原生態系 / 環境評価 / 指標種 / 生物多様性 / 保全生態学 / 霧ヶ峰 / 阿蘇くじゅう国立公園 / 草原性植物
研究実績の概要

昨年度に引き続き、今年度も霧ケ峰高原の立地条件の異なる各地区において蛾類等の群集調査と植生調査の本調査等を実施した。さらに阿蘇くじゅう国立公園においては本調査を蛾類とゴミムシ類群集および植生について実施した。
ここでは霧ヶ峰高原における蛾類とゴミムシ類群集の結果・考察について述べる。2019年から2020年の2年間で蛾類群集の定量的調査では草原8地区と森林3地区の計11地区で実施され、合計593種14,759個体が確認された。長野県および環境省の絶滅危惧種は定性的調査を含み16種が確認され、多様な草原性種が記録された。草原の遷移進行および森林の指標としてウチキシャチホコ亜科とアツバ亜科等、遷移度の低い草原の指標としてカドモンヨトウ族等が抽出された。
霧ヶ峰高原におけるゴミムシ類群集の調査区は草原の6区と森林の2区の計8区とした。なお、各地区の標高は1,500m~1,925mである。群集調査と立地環境調査は2020年4月下旬~10月下旬に実施し、各調査区の個体数等を用いて比較した。さらにTWINSPAN解析より、本分類群の環境指標性を検討した。調査期間中、ゴミムシ類は1科23属57種5,200個体を得た。群集の多様性は全体的に高く、草原と森林間の差異は小さかった。さらにTWINSPAN解析等では、相観的に類似した草原植生であっても、個々の立地環境条件に応じて群集の組成と構造は異なっていた。以上、巨視的には同様な環境下においてもミクロハビタットの差異に応じて、ゴミムシ類群集の組成と構造は異なることが明らかとなった。よって、本分類群は衰退が危惧される半自然草原においても環境指標として有用であることが示された。なお、環境指標の候補としては、先行研究で言及された属や種に加えて、新たにコクロナガオサムシ等は森林、オオキンナガゴミムシ等は草原の指標種として利用可能であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ禍による所属大学の出張規制のため、2020年6月中旬まで県外への調査旅行が実施できなかった。そのため、阿蘇くじゅう国立公園における調査は7月から開始することとなり、研究活動の進捗が遅れた。また、2020年は6月から7月に阿蘇くじゅう国立公園において豪雨災害があり、調査地や生物相にも大きな影響があった。九州での調査開始が遅延したり、豪雨の影響を受けたが、調査および研究全体は、おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策について大きな変更は無いが、新型コロナウイルスの感染拡大によって県外移動が厳しくなることも予定される。できるかぎり今後も新型コロナウイルスへの対応を万全にとりながら、本研究を推進していく所存である。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (16件)

  • [雑誌論文] 霧ヶ峰高原の異なる植生環境における蛾類群集の組成と構造 および環境指標性の検討2021

    • 著者名/発表者名
      田島尚、大窪久美子
    • 雑誌名

      技術情報(令和2年度カラマツ林業等研究会特集:長野県林業センター)

      巻: 165 ページ: 6-9

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 由布・九重地域における半自然草原および湿生草原の群落の現状2021

    • 著者名/発表者名
      大窪 久美子、本間 政人、田島 尚
    • 学会等名
      日本生態学会第68回全国大会
  • [学会発表] 本州中部の半自然草原における蛾類群集の環境指標としての有用性2021

    • 著者名/発表者名
      田島尚、大窪久美子
    • 学会等名
      日本生態学会第68回全国大会
  • [学会発表] 草原生態系におけるゴミムシ類の群集構造と環境評価への利用2021

    • 著者名/発表者名
      本間政人、大窪久美子
    • 学会等名
      日本生態学会第68回全国大会
  • [学会発表] 本州中部・霧ヶ峰高原におけるアリ相および生息アリ類の環境指標性評価2021

    • 著者名/発表者名
      植野侃太朗、大窪久美子
    • 学会等名
      日本生態学会第68回全国大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原における鳥類群集と植生および周辺土地利用との関係2021

    • 著者名/発表者名
      小木曽快、大窪久美子
    • 学会等名
      日本生態学会第68回全国大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原における異なる刈り取り管理下にあるニッコウザサ群落の組成と構造2020

    • 著者名/発表者名
      大窪久美子
    • 学会等名
      2020年度日本造園学会全国大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原における草原性蛾類の生息現状および環境指標性2020

    • 著者名/発表者名
      田島尚、大窪久美子
    • 学会等名
      令和2年度日本造園学会中部支部大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原における草原性蛾類の環境指標性および植生・管理手法との関係性2020

    • 著者名/発表者名
      田島尚、大窪久美子
    • 学会等名
      第32回日本環境動物昆虫学会年次大会
  • [学会発表] 本州中部の高標高に位置する草原における指標生物としての蛾類群集2020

    • 著者名/発表者名
      田島尚、大窪久美子
    • 学会等名
      第5回山岳科学学術集会
  • [学会発表] 高標高地に成立する半自然草原におけるゴミムシ類の群集構造と環境評価に関する研究2020

    • 著者名/発表者名
      本間政人、大窪久美子
    • 学会等名
      令和2年度日本造園学会中部支部大会
  • [学会発表] 本州中部の半自然草原におけるゴミムシ類の群集構造と環境評価に関する研究2020

    • 著者名/発表者名
      本間政人、大窪久美子
    • 学会等名
      第32回日本環境動物昆虫学会年次大会
  • [学会発表] 半自然草原における植生の階層構造に応じたアリ類群集の変化2020

    • 著者名/発表者名
      植野侃太朗、大窪久美子
    • 学会等名
      令和2年度日本造園学会中部支部大会
  • [学会発表] 半自然草原におけるアリ類群集の環境指標性評価2020

    • 著者名/発表者名
      植野侃太朗、大窪久美子
    • 学会等名
      第32回日本環境動物昆虫学会年次大会
  • [学会発表] 霧ヶ峰におけるアリ類群集の種組成と植生環境との関係および指標生物としての有効性2020

    • 著者名/発表者名
      植野侃太朗、大窪久美子
    • 学会等名
      第5回山岳科学学術集会
  • [学会発表] 霧ヶ峰高原における鳥類群集と植生との関係について2020

    • 著者名/発表者名
      小木曽快、大窪久美子
    • 学会等名
      令和2年度日本造園学会中部支部大会
  • [学会発表] 本州中部の半自然草原における鳥類群集と植生環境との関係―霧ケ峰を事例として―2020

    • 著者名/発表者名
      小木曽快、大窪久美子
    • 学会等名
      第5回山岳科学学術集会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi