研究実績の概要 |
今年度は特にオサムシ科甲虫(ゴミムシ類)群集を用いた新規評価手法の研究を実施した。また草原の植物種の多様性については、くじゅう地区を中心に研究を進めた。 オサムシ科は全調査期間で霧ケ峰では58種6,654個体、くじゅう地域では38種1,359個体が得られた。群集の組成や構造は地域や各植生間等で異なり、指標性の高い種も存在した。チョウ類群集の環境評価指数であるER指数を応用した新規指数を考案した。本指数は霧ケ峰高原では採草地等の二次段階、くじゅう地域では耕作地等の三次段階の比率が高かった。さらに、同地域内でも植生環境の違いに対応し、各環境段階の比率が異なった。これらは植生管理の履歴や立地環境条件の違いが関係すると考えられた。以上、本科群集は地域や植生環境間で組成や構造が異なった。一方、地理的に離れた各環境において共通種が存在していた。本科の多くは植生環境のみならず他分類群の多様性を評価できる可能性が示唆された。よって、新規手法のオサムシ科群集への適用は可能と考えられた。 草原の種多様性については「くじゅう地区」で最も種多様性が高い群落型では28~43種(2m×2m)が出現した。本群落型では特にネザサの被度が極端に低く、ススキの優占度も他群落型よりも低かった。またイネ科多年生草本では、トダシバの優占度が他群落型より高く、レンリソウやスズサイコなどの絶滅危惧種や希少チョウ類の食草であるツルフジバカマやカワラケツメイの出現が特徴的であり、サワヒヨドリやオカトラノオなどの地域では一般的な多数の草原性草本植物で構成された。本群落型ではハナウド等、湿性植物の出現も多く、土壌含水率が高いことも種多様性の要因と考えられた。出現種数が多かった要因としては、本群落型は刈取り頻度の高いシバ型の草地群落と接しており、適度なかく乱を受けていることが考えられた。
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