研究課題/領域番号 |
19K06108
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
稲垣 栄洋 静岡大学, 農学部, 教授 (20426448)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 植生 / 雑草抑制 / ペレット |
研究実績の概要 |
本研究は、①雑草種を材料とした資材の開発と、②目的とする雑草を得るための植生管理技術の開発の2つの課題からなる。 ①については、草本性植物であるイタドリを材料としたペレットを作成し、イタドリペレットにおいても、木本植物を材料としたペレットと同様に、被覆したペレットが圧密したマットを形成し、物理的に雑草を抑制する効果を確認した。ただし、ペレットを薄く処理した場合、多年生雑草やつる雑草の発生が問題になることが明らかとなった。このことから、発生する雑草種の種類によっては、被覆の厚さについて、さらに検討する必要があると考えられた。さらに、イタドリペレットは、雑草抑制資材として用いることができるだけでなく、トマトの品質を向上させたり、ナス科作物の病害抵抗性誘導や連作障害を回避する等のさまざまな副次的な効果を有することが明らかとなり、イタドリペレットが園芸資材としても活用可能である可能性を見出した。 ②については、通常の草刈り高では雑草害の大きいイネ科雑草群落に誘導されるのに対して、草刈り高を高くすることで、ネズミムギ等のイネ科植物の優占度を低下できることを確認した。また、目的植生であるイタドリの草刈りに対する適応性と草刈りによる群落構造の変化を明らかにし、草刈りの時期と草刈りの高さを変更することで、イタドリ群落を抑制したり、逆にイタドリ群落を保全するという2つの方向で管理できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の柱の1つである「雑草種を材料とした資材の開発」については、誘導植生のターゲットであるイタドリの資材の複数の有用性を確認し、ほぼ目的を達成している。 2つめの柱である「目的とする雑草を得るための植生管理技術の開発」については、イタドリの刈取り反応性等を調査し、イタドリの草刈り方法の違いにより、イタドリの群落を抑制したり、保全するという管理が可能であることを明らかにした。ただし、これらは研究圃場での試験結果である。これまで、コロナ禍により現地調査ができずにいることから、今年度以降、現地調査を行なっていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、誘導植生の目標であるイタドリの刈取り反応性等について明らかになった。これにより、草刈りの方法を変化させることによって、イタドリを抑制したり、逆に保全管理するという2方向での管理が可能になると考えられる。ただし、競合種となるイネ科雑草との競合関係が不明である。今後は在来種のススキや、外来のイネ科雑草等、イタドリ群落と競合しやすいススキ等のイネ科植物の刈取りに対する反応性等を調査する予定である。また、コロナ禍で予定していた現地調査ができていないため、現地調査についても進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で現地調査ができないことにより旅費の支出が少なくなった。現地調査ができないため、実験室内で栽培試験を行ないデータを補うことを考えている。今年度は、未実施であった現地調査を行なうとともに、栽培試験に必要なインキュベーターの購入等に利用を図りたい。
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