2022年度については、2020年に作成した東京都台東区湯島駅周辺の分布図を基に生存状態の確認を行った。その結果、大部分のオリヅルランが継続して生育していることを確認した。2023年1月26日には東京のアメダス観測点において-3.4℃という近年にない低い最低気温が記録されたが、その後も顕著な凍霜害を受けている様子は見受けられなかった。 研究期間全体を通じて実施した成果は以下の通りである。 2019年度には、大阪府大阪市梅田駅周辺、奈良県奈良市(新大宮駅周辺、富雄駅周辺、平城山駅周辺)、京都府八幡市男山東地区の5か所において分布調査および気温測定を行った。その結果、梅田駅周辺における高密度の植物分布が確認され、次いで奈良市新大宮駅周辺、奈良市富雄駅周辺、八幡市男山東地区、平城山駅周辺の順で植物密度が低下しているのを確認した。2019年度において調査対象3地域の最低気温は、-3.0~-1.0℃程度に達していたと推定され、今回の奈良市の対象地域は過去に調査を行った都市よりも寒い地域であると言えるが、それでもオリヅルラン類は屋外生育が可能であることが明らかになった。 2020年度には、東京都台東区湯島駅周辺、京都市内、京都府八幡市市役所周辺の3か所において分布調査および気温測定を行った。その結果、東京都台東区湯島駅周辺における比較的高密度の植物分布が確認された。京都市内では、四条から五条にかけてのエリアでは比較的多くの株の生育を確認したが、五条以北の地域では非常に生育密度が低かった。京都府八幡市市役所周辺では、男山東地区よりも高い密度で生育が確認された。 2021年、2022年にはこれら測定対象地域の一部について生存確認作業を行った。これらの調査結果から、当初の想定以上にオリヅルランの生育範囲は広がっており、最低気温-3.0℃程度の地域までは屋外定着可能であることが示唆された。
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