研究課題/領域番号 |
19K06111
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
加我 宏之 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (00326282)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 都市緑地 / 都市農地 / 機能評価 |
研究実績の概要 |
本研究では、大都市の縮図である大阪府堺市を対象に、都市農地をグリーンインフラを構成する都市緑地の一つとして位置づけ、将来推計人口も踏まえて、都市緑地の需要量と供給量を推計し、市街地形態に応じて公園緑地体系を補完する都市農地の都市緑地の機能評価手法を開発することを目的としている。 英国をはじめとする先進諸都市や我が国の都市圏における環境インフラやグリーンインフラの評価手法の比較考察を通じて、循環型都市や低炭素型都市、生物多様性の保全等に寄与するグリーンインフラの需要と供給の量と位置を推計するための評価手順を整理した。例えば、英国のリバプール市のグリーンインフラストラクチャ戦略では、都市環境形成に資する都市緑地として公園や樹林地、農地などの15種の緑地空間を対象としており、利用形態や植生の条件等に合わせて、レクリエーション機能や景観性機能、野生生息地機能など、21種類の機能を供給するとされている。解析では、それぞれの機能供給エリアを特定し、それぞれの機能がどの場所に求められているのかを対象地域の人口特性や地理条件等から需要エリアとして特定し、それぞれの機能毎に供給エリアと需要エリアを重ね、需要エリアに占める供給エリアの割合を充足率として計量化し、充足エリアの評価を行っており、本研究ではこれらを参照し、都市緑地の需要量と供給量を推計し、市街地形態に応じて公園緑地体系を補完する都市農地の都市緑地の機能評価手法都市緑地の評価手法を仮に設定した。 都市農地は、市街化の進展に伴い減少しており、都市緑地の中でも最も動的に変化する。そこで、将来の都市農地の存在形態を予測するため、1990年代から2020年代にかけての変化実態を捉え、将来の都市農地の残存状況を予測するための基礎情報を明確化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
都市環境インフラやグリーンインフラの評価手法の比較考察を通じて、循環型都市や低炭素型都市、生物多様性の保全等に寄与するグリーンインフラの需要と供給の量と位置を推計するための評価手法を仮に設定したが、緑地に係る各種のデジタルデータが充実している堺市を事例に、地理情報システム(GIS)の地理的空間解析機能を用いて、前段階で構築した評価手順に従い、将来推計人口を踏まえ、都市緑地の需要量と需要位置、公園緑地や樹林地、河川・水路に加えて都市農地が発揮する都市緑地の供給量と供給位置を推計する。 堺市を対象に、評価の目的変数となる公園配置状況、2018年時点での農地を含む緑被現況のデータベース化、解析単位を小学校区として、「どの地域に都市緑地が不足しているのか」、「どの都市農地が都市緑地として有効に機能するのか」等を評価するため、校区ごとの人口及び将来推計人口、地理条件等の説明変数となる指標のデータベース化し、評価のための基礎条件を整理した。中でも、都市農地は、都市緑地の中でも市街地状況に応じてその保有量が動的に変化し、都市農地の将来の残存形態を予測するための基礎資料とするため、1990年代から2020年代にかけての過去からの動的変化を捉えた。その結果、1990年代から2020年代にかけて堺市域の都市農地は、約3分の1に減少しているが、現在でも堺市東部に田を中心に都市農地が存在すること、中央部では畑を中心に都市農地が存在していることをデータベース化し、中でも2020年時点で他と比較して都市農地を多く保有する小学校区を特定した。また、田が優占する田中心地区、田畑が同程度存在する田畑混在地区、畑が優占する畑中心地区等、都市農地の存在形態を小学校区ごとに分類し、どこでどの都市農地が都市緑地として有効に機能するのかを評価するための都市農地を地理的空間上で明確化した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で設定しつつある都市緑地の評価手法を用いて、都市緑地が保有する機能について、需要と供給の関係から、都市農地は市街化区域では学習機能やレクリエーション機能、文化機能、市街化調整区域では気化冷却機能や野生生物生息環境機能等の機能を充足し、これらの機能面において都市公園等を補完していることが予測される。都市農地の分布形態については、過去からの動的変化実態を明確化するとともに、現在の存在形態を分布形態毎に明確化した。 今後、都市農地に対する機能として市民農園や体験農園といったレクリエーション機能がますます高まっていること、また、本研究で参考とした評価手法は英国のものであり、英国の農地は乾地を基本としているため、水田である西日本の農地が保有するといわれている水流出の減少機能や生物多様性の保全機能等を正確に評価できていないといった限界も認められつつある。都市住民に都市農地の緑地的価値に対する評価は高まりつつあるものの、その実態は不明確なことから、都市農地の都市公園の補完する機能をより正確に評価するため、自然供給や景観形成、微気象調節といった都市農地の存在価値のみならず、食料供給価値に加えて、市民農園や体験農園、体験イベント等を通じて都市住民の都市農地の利用価値を都市住民の意識レベルから捉え、都市農地が都市緑地を補完する機能の評価手法の改善を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の予算執行額に残額が生じたが、2021年度の住民意向調査や最終の取りまとめに際して図面出力等の支出が必要なため、2021年度に2020年度の残額を適切に予算執行する予定である。
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