研究課題/領域番号 |
19K06114
|
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
鈴木 貢次郎 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (80256643)
|
研究分担者 |
金澤 弓子 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (50572517)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 里山 / 都市 / 樹木 / 土壌 / 物理性 / 化学性 / 巨木 / 造園 |
研究実績の概要 |
1950年代からの高度経済成長による環境破壊後,多くの緑化・植栽が施されてきたが,その後の植物の生長に伴う落葉落枝の問題,1980年代からのバブル経済期の無秩序な土地開発,さらに近年の再開発,土木・建築物の改築に伴う樹木の伐採,都市公園法の改正,緑地の消滅等,首都圏をはじめとして,それぞれの地域で緑地をどのように守るのかは,大きな課題であり,私達に託された使命である。 緑地を構成する主要素材は,土と植物(樹木と草本)であり,中でも樹木の生育に及ぼす環境要因を探る際,長い時間をかけて生育してきた巨木に関する調査研究が有益である。そもそも里山で生育しているヤマザクラやコナラ,クヌギ,イヌシデ,エゴノキ等の樹木(特に巨木)を,首都圏の公園内や街路樹でみることができないのはなぜか(鈴木・亀山2015:多摩川周辺に残る里山の植生の類型化に関する研究,とうきゅう環境財団)という基本的な疑問が湧いてくる。温度の影響もあると思われるが,その差は明確に表しにくく,ましてや光の問題の違いは都市と地域とで差があるとは思われない。都市において最も劣悪な環境条件と思われるのは,土壌条件と思われるが,不可視な部分(地下部)も多いため不明な点が多い。都市特有の土壌の物理性や化学性,生物性などの質の問題だけでなく,樹木の生育に必要な土壌の面積や体積などについても不明な点が多い。本研究では,都市環境を一つの実験地と捉え,都市と郊外の緑地(里山を代表する針広混交林)間の環境を比較し,植物の生育に及ぼす土壌要因(物理性と化学性)を探った。 特に本年は,クスノキやスダジイ,シラカシ等の常緑広葉樹を中心に,異なる土壌条件と生育状態の関係について現地調査と圃場実験を行った。その結果,樹種によって土壌の物理性や化学性の条件が著しく異なることがわかり,それぞれの土壌条件における生育特性を明らかにすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異なる土壌条件をつくった実験用ポットに苗を植える実験を開始できた。生育実験の準備後,定期的な生育調査や土壌分析を行い,初年度の生育量調査を終えることができた。これらの結果は,樹木医学会(速報)にて発表,投稿し,受理・掲載された。また2019年9月に英国で開催されたArboricultural Asociation(樹芸学会)や,Woodland and Tree Archaeology Conference (樹木考古学)のワークショップで発表できた。 新型コロナウイルスが広がる2020年2月頃までは順調に実験調査をすすめられていたが,感染防止のため,学内にある研究室や圃場への立ち入りが制限され,一定期間生育調査などが出来なくなった。この事態については,今後コロナウィルスの感染防止対策を徹底しつつ,収束後,この期間にできなかった生育量調査を十分に行い,追加調査項目(例えば光合成速度の測定)を増やすようにする。
|
今後の研究の推進方策 |
現在実施している圃場試験は,樹木を対象としている。植物の生育試験は時間を要するが,中でも樹木を対象とした生育試験は,時間を要する。そして継続してデータを集めることが極めて重要となってくる。本年は,すでに設置してある実験用ポットの生育量調査の継続を第一に徹底する。すでに設置してある実験用ポットとは,土壌の物理性や化学性を違えてあるノウヴェールポットであり,実験供試植物は,クスノキやシラカシ,ウラジロガシ,スダジイである。 新型コロナウイルスが収束次第,不十分になったデータを回収し,分析する。また新たな測定項目(光合成速度や土壌,葉の養分分析など)や実験供試植物(落葉広葉樹)を増やし,2019年度までの結果と比較する。 また首都圏外の自然環境下での生育調査が不十分であったため,その現地調査を本年度に行う。但し,新型コロナウイルスの感染状況によって現地調査を首都圏,またはその近郊に限るようにする。 その間,文献調査をさらに徹底して行い,既往の報告と,これまでの実験結果と比較する。新型コロナウイルスが収束し,学会等での口頭発表の機会がある場合は,その旨口頭で発表する(例えば樹木医学会)。大会などが中止になる場合も想定され,学会への投稿論文に重みをおく(造園学会や樹木医学会)。学会への投稿論文のうち,2020年5月に不採用になった投稿論文があるため,統計的手法を駆使して論文を再執筆し,再投稿に挑む。
|