戦後の高度経済成長で起きた環境破壊に対する緑化・植栽の施工後,当然ながら植物は大きく成長してきた。あわせて1980年代からの無秩序な土地開発や再開発,自然観の変化,土木・建築物の改築に伴う樹木の伐採,都市公園法の改正等,植物の生育条件は年々悪くなるばかりである。首都圏をはじめとして,それぞれの地域で緑地をどのように守るのかは,大きな社会門題であり,私達に託された使命である。緑地を構成する主要素材は,土と植物(樹木と草本)であり,中でも樹木の生育に及ぼす環境要因を探る際,長い時間をかけて生育してきた巨木に関する調査研究が有益である。環境要因としての都市における土壌条件は,極めて劣悪であり未解明な問題が多い。都市土壌に特有の土壌の物理性や化学性,生物性などの質的な問題だけでなく,樹木の生育に必要な土壌の面積や体積など,量的な問題についても不明な点が多い。本研究では,都市環境を一つの実験地と捉え,都市と郊外の緑地(里山を代表する針広混交林)間の環境を比較し,植物の生育に及ぼす土壌要因(物理性と化学性や面積,地形)を探った。その結果,東京都,及びその西部に広がる巨木の種の違い,シイノキの生育を阻害する土壌の物理性や生育量に影響する化学性,シイノキの中のスダジイとツブラジイ,及びこれらの雑種が生育する地形の特徴について明らかにした。また緑地の樹木の種の確保のためには,土壌地面積(緑地であっても建築物や舗装路等の面積を除き,植物が生育できている土壌地の表面積,人工地盤緑地を除く)が重要であること,中でも高木の種数は,この土壌地面積の大きさと高い相関関係があることを明らかにした。これらの成果は樹木を保全するための環境保全や都市公園,街路樹などでの植栽管理,都市の生物多様性の向上のための基礎的知見となった。
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