研究課題/領域番号 |
19K06115
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
國井 洋一 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (10459711)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Semantic Segmentation / 奥行き情報 / 写真測量 / レーザ測量 |
研究実績の概要 |
2019年度に実施したSemantic Segmentationの手法検討により、造園空間における景観構成要素に対する分類が可能となった。そこで、2020年度は分類可能とする各要素のさらなる高精度化ならびに、奥行き情報を中心とした3次元情報を付与するための測量手法の確立を試みた。 Semantic Segmentationの高精度化に際しては、PSPNetを用いた。PSPNetはオブジェクト間の関連性や類似性の判別、不明瞭なクラスの検出を行わせることを目的に開発されたアルゴリズムである。このPSPNetとオープンデータセットであるCityscapeを用い、自動でアノテーション作業を行った。Cityscapeは、ドイツの都市景観にアノテーションを施したオープンデータセットであり、景観特化で多量のセグメンテーション画像を持っているデータセットのため、本研究にて採用することとした。 一方、測量手法としてはレーザ測量の可能性を検証した。従前の計画では写真測量を想定していたが、近年の技術革新によりレーザによる計測が急速に進歩した。特に最近ではスマートフォンやタブレットにもLiDAR機能が搭載されるなど、一般的にも身近な技術となっている。そのような状況を考慮して、レーザ測量による奥行き情報を景観の点数化に加味する方法についても検討を行った。 2020年度は以上の成果をISPRS(International Society for Photogrammetry and Remote Sensing)や日本造園学会、日本写真測量学会にて、学術論文および学会発表として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Semantic Segmentationの高精度化においては、目標となる画像生成を行うことのできるシステムを開発した。そのシステムの性能評価として、生成された画像と基画像との間におけるpixelあたりの濃淡値の差分を算出し、差分画像による評価を実施した。その結果、両画像間のマッチング率は93.5%となった。ミスマッチングの主な要因としては、水辺空間が正しく表現されていない例が確認された。これはアノテーション作業において使用したCityscapeデータセットの影響が大きいと考えられる。Cityscapeはドイツの都市景観で構成されたデータセットであり、池や湖などへの適応性が低いと考えられる。そのため、水面を路面と誤認識し、元の画像から遠い画像が生成されたものと考えられる。加えて、基画像には存在しない要素を認識している例もある。作業の簡略化のために既存のCityscapeデータセットを用いたが、改めて景観生成に適したデータセットを作成する必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに高精度なSemantic Segmentationを目指すと共に、奥行き情報に関してレーザ測量による奥行き情報を景観の点数化に加味する方法についても検討を行うこととする。景観を点数化する指標としてはVQM (Visual and Ecological Environmental Quality Model) を用いる予定であるが、VQMの演算においては景観構成要素を近景・中景・遠景に分類する必要が発生する。その分類を定量的に実施するためには、測量手法の導入が不可欠であるが、本研究ではレーザ測量による点群データを用いることで、その課題解決を見出すこととする。
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