本研究は、樹木の保全・保護に菌根菌を活用した手法を開発することを念頭に、絶滅危惧種のヤクタネゴヨウの生存に関わりを持つヤクタネショウロの埋土胞子の生存期間を解明することを目的としている。本研究では、土壌中の菌根菌の胞子をいったんヤクタネゴヨウの実生に感染させて菌根を形成させ(バイオアッセイ法)、できた菌根をDNA解析することによって菌種を同定した。以下の2つの課題に分けて研究を行った。 1.現地での埋土胞子の生存期間(長期)の推定 種子島内で周囲数百m以内に生残ヤクタネゴヨウがない枯死時期の異なる(2~71年前)枯死木を10本選択し、土壌サンプルを採取した。その後、保存した土壌を50mlチューブにいれ、ヤクタネゴヨウの種子を播き育苗した。播種から6ヶ月後にバイオアッセイ苗を採取し、実生の菌根を観察した。各菌根形態からDNA解析用サンプルを採取・選別し、菌種を同定した。その結果、ヤクタネショウロの埋土胞子は少なくとも16年は生存可能であることが明らかになった。 2.実験室での埋土胞子の生存期間(短期)の検証 屋久島の西部地域の鹿見橋尾根と種子島の中割のヤクタネゴヨウ自生林分でヤクタネショウロを採取した。採取したキノコから胞子懸濁液を作成し、滅菌土壌に同じ濃度に調整した胞子懸濁液を接種した。胞子懸濁液を接種した土壌を4種類の環境条件で保存した。保存期間は胞子接種後0日、1、1.5、2、3、4、5、10年に設定した(本申請では2年までを明らかにする予定)。保存期間の終了後にヤクタネショウロはヤクタネゴヨウでバイオアッセイを行なった。このうち、保存期間0日のバイオアッセイ苗は接種したすべての苗から菌根の形成を確認し、DNA解析による同定をもとに、形成していた菌根が接種した菌であることを確認した。
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