研究課題
中国大陸での生物群集の多様性形成における日本列島の役割を、大陸(本土)から島嶼環境へ移入し固有化した植物種が大陸へ再移入し、祖先種との相互作用(交雑など)を通じで種多様化の駆動力になるという仮説を元に、進化学的プロセスと生態学的プロセスから実証することで、本プロセスの普遍性を証明することを目的とした。しかしながら、コロナ禍において大陸の種との相互作用についての検証を行うことが出来なかった。このため、日本国内において、南西諸島を中心としたツバキ属の分子系統解析についての整理を行った。さらに、日本のツバキ節間において花弁や葉に内生する菌類の比較も行った。花形質の結果では、ツバキ節は花サイズが大きく、均質的であることが示された。サイズは仮説の通り、また、おしべの長さについても鳥類をポリネーターとして適応している可能性が高かった。さらに、ツバキ節の均質性については、起源の古い白花などの系統の種と比較すると、比較的短時間に分化した可能性が示唆され、ゲノムワイドSNP解析からもその結果が支持された。日本のツバキ節の分布変遷と大陸への移入については、まず、沖縄・台湾の集団と日本の北寄りの集団が分岐し、その後日本の南寄り集団が北寄り集団から分かれ、さらに最終氷期後に中国・韓国集団が南寄り集団から分かれたと推定された 。つまり、中国と韓国の集団は日本の南寄り集団から大陸へ南下した集団と予測され、生息適地推定の結果とも一致した。また、日本の北寄り集団は、従来は最終氷期に南下した集団からその後の間氷期に北上した派生的な集団と考えられることが多かったが、むしろ本州に遺存する祖先的集団であることが示唆された。サザンカでは、遺伝的多様性や集団サイズは石垣・西表が多く、南琉球が祖先的集団と推定された。ツバキ節の内生菌では、多雪地に特異的と考えられる菌類等が明らかになった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件)
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