岐阜県生井川上流の落葉広葉樹林を対象に2011年8月に取得された航空レーザデータを利用して、林冠の3次元構造に基づいて葉面積指数(LAI)を推定する方法を開発した。2022年度はこれまでの解析結果を整理した。毎木データに対してアロメトリ式を適用して単木の葉量(葉面積)を求め,ワイブル分布式を適用して葉面積の垂直分布を推定した。これにより2011年頃に調査した40カ所のプロットについてLAIと葉面積の垂直分布のデータを得た。2019年と2020年に5カ所のコアプロットで地上調査を実施し,リタートラップ計測,アロメトリ式,全天写真解析,相対光量子束密度解析およびBeer-Lambert則によるレーザデータの解析(吸光係数=1)によってLAIまたは植物断面積指数(PAI)を推定して特徴を比較した。その結果,5カ所のプロットについてリタートラップとアロメトリ式はLAIの大小関係は同じ傾向だったが,他の3方法で推定したPAIはLAIとは違う傾向で,推定値が飽和して小さいことが表れた。 そこで,40プロットについて求めた葉面積のデータを利用して,高さ別に吸光係数を推定してレーザデータに適用し,PAIを推定する方法を開発した。樹冠高を標準化して0-33%,34-66%,67-100%の高さの階層別に葉面積を求め、レーザパルスの透過率とBeer-Lambert則に基づいて階層ごとに吸光係数を求めた。吸光係数は上部ほど小さく,下部は非常に大きな値となって幹がレーザパルスを遮断している状況が表れた。得られた吸光係数を各層に当てはめてBeer-Lambert則でPAIを推定したところ、推定値の飽和現象が改善され樹冠を1層として扱う従来の推定法よりPAIの推定精度を大幅に改善できた。吸光係数をキャリブレーションしたことによってLAIに近い値を推定できたと考えられる。
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