研究課題/領域番号 |
19K06126
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
菱 拓雄 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50423009)
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研究分担者 |
兵藤 不二夫 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (70435535)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 温暖化実験 / 地球温暖化 / トビムシ / PLFA |
研究実績の概要 |
本研究は、土壌性のトビムシ群集を材料に、生物群集がそれまでに経てきた歴史的背景が気候変動フィルターに対して重要な役割を果たすかどうかについて、ストレスの強い環境と弱い環境下での土壌生物群集を用いて、温暖化応答を実際の野外林地で検証することを目的としている。 この点の背景として、環境に対する土壌生物群集の反応についてのアイデアについて、「土壌環境と植生がトビムシ群集の機能構造に与える影響」の題目で生態学会大会において発表(大会は中止。要旨P2-PA-011のみの発表)を行った。 これまでの野外実験研究をレビューすると、無電源のオープントップチャンバーによって温暖化がうまくいった事例は多くない。下記2019年度の進捗状況に示したとおり、我々のシステムは斜面の方位を考慮しても、無電源で平均地温にして1-3度あたたまり、平均日較差1-4度となるOTCシステムを構築することができた。これは環境依存性はあるものの、電源のない山奥の落葉樹林内でも温暖化の実験が可能となることを示す重要な結果である。 この点で、2019年度はより効果的な温暖化実験機器の開発や、モニタリング体勢の検討を行い、適切な観測体制を築くことができた。 これを踏まえて2020年度は、季節による温暖化影響を観測する予定であるが、新型コロナウイルスによる代表者、協力者の出張制限により、予定の試料採取が困難である可能性がある。この点の解決のため、現地九大北海道演習林のスタッフの協力を得て、遠隔での試料採取、郵送の体制を構築、運用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の夏までは、林地土壌を温暖化するために用いる無電源のオープントップチャンバー(OTC)の作成と効果の検証を行った。 既存の方法では必ずしもうまく行かないことがわかったため、壁面材料、形状を変えた4種類の試作機を過去の類似研究をもとに作成し、OTCの中と外に温度計を設置、昼夜の違い、季節、斜面方位の違いに対する温度の違いを調査した。それぞれの資材費についても検討した。 このうち、安価で再現性も高く、量産が可能な農業ビニールの傾斜壁面型OTCが本実験に最も適していることを確認した。このOTCでの温暖化効果は、南斜面、北斜面とも最大地温、平均地温について、1-3度上昇した。ただし地面の乾燥化はみられなかった。同時に、日較差は南斜面で4度、北向き斜面で1度の違いがあった。設置する環境により、passive typeのOTCでは温暖化効果が異なることは実験上一つの問題である。このOTCの効果についての詳細は学内誌などで報告書を作成する予定である。 また、北海道においては野外機材の動物被害は深刻であり、OTCも度々シカやキツネの被害を受けている。これに対しては、市販の鹿よけ警報機、狼の尿成分のバッグなどを用いて対処している。この効果についてもモニタリングを続け、報告したい。 2019年9月より北海道演習林の独立した6つの斜面上にそのOTCを3つずつ、計18基設置し、林地斜面上の温暖化が土壌生物に与える影響を調べる実験を開始した。OTCを設置して3ヶ月が経過した11月に微生物、動物調査用サンプルを採取し、PLFAによって微生物相をツルグレン装置による抽出によって土壌動物相を調べている。
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今後の研究の推進方策 |
5月の雪解け直後、8月の乾燥期、11月の落葉期に通年継続してサンプリングを行い、温暖化が環境によって、また時期によってどのように土壌生物に作用するのか、明らかにする所存である。 今年度で結果が出揃い、来年度には論文として出版できるように努力したい。 ただし、新型コロナウイルスによる出張の制限が今後継続する可能性もある。このため、現地の研究協力者(九大北海道演習林、智和正明准教授ほか)などにサンプリングと試料送付に関する指示を行い、不測の事態に備えることにしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
野外実験装置の開発が想定よりも安価に可能になったことで、次年度以降の観測に予算を利用することが可能となった。これまで予算の都合によって少なかった観測点の温度センサーの増設および土壌窒素の分析などサポートデータの充実に利用する予定。
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