研究課題/領域番号 |
19K06128
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
今井 伸夫 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (00722638)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 菌根菌 / 呼吸 / 炭素配分 / 森林 / 二酸化炭素 / 根 |
研究実績の概要 |
本年度は、1.土壌呼吸に占める菌根菌呼吸の割合、2.菌根菌呼吸の常緑及び落葉広葉樹間の比較、3.先端根圏呼吸測定手法の開発を行った。 1.と2.は、東京農工大FM多摩丘陵内の二次林で行った。1.は菌根菌糸培養用コアをコナラ林内の4地形(尾根、谷、北斜面、南斜面)において4カ月間野外培養し、その後菌根菌糸の呼吸速度とバイオマス指標を測定した。2.は、これと同じ作業を常緑性アラカシ林下においても行い、先述の落葉樹コナラの結果と比較した。菌根菌呼吸が土壌呼吸に占める割合は、地形間でやや異なり4-28%と推定された。これは、既存研究の値(3-25%)の範囲以内であった。しかし本研究は、既存研究が行ってこなかった菌根菌呼吸のみを抽出する工夫(炭素フリー培養土への置換、細根や腐生菌のコンタミ回避など)を取り入れることで、従来法よりも高精度な菌根菌呼吸測定法だと考えられる。2.に関しては、一般に落葉樹(ここではコナラ)の方が常緑樹(アラカシ)よりも光合成速度が高く呼吸基質をより多く得られるため、菌根菌呼吸はコナラの方がアラカシより高いと予測していた。しかし、アラカシにおける菌根菌呼吸速度の方がコナラより高かった。これは、測定時期が秋季でコナラの光合成活性が低下していたためと考えられた。 3.は、市村清新技術開発財団が所有する熱海市の植物研究園テストフィールドにおいて行った。シリンジ型マイクロチャンバーを用いた先端根圏の呼吸速度測定手法と菌根菌殺菌剤を用いた、手動操作ながら経時的に先端根圏呼吸を測定できる手法開発を試みた。スダジイ先端根の根圏および根呼吸を3日間にわたって1-2時間ごとに測定した。しかし、測定誤差が大きく、まだ手法改良の余地が大きいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ね順調にに進んでいる。しかし、2020年春に回収予定だったサンプルがコロナ禍で回収できなかったため予定していた研究(菌根菌呼吸速度の季節性)がやや長期化すると考えられる。また、先端根圏呼吸の測定手法は、1.チューブ継ぎ手がリークしやすい、2.測定前にシリンジ内に滞留したCO2が除去されづらい、3.培養液がエア・サンプル用チューブに入りやすい、4.先端根がガラスビーズに圧着してCO2濃度が上昇しづらい、5.土地的制約から十分な夜間観測が出来なかった、等の理由により、まだ改良の余地が大きいと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も予定通り、1. 生活型(常緑・落葉)と菌根菌タイプ(外生菌根性・アーバスキュラー性)の異なる樹種の菌根菌呼吸の野外測定、2. 同時測定している土壌呼吸のデータを用いて、土壌呼吸に占める菌根菌呼吸の寄与度に関する解析、3. コア内の菌糸量および炭素含有量の測定を行い、菌根菌の呼吸-バイオマス関係、および呼吸-炭素量関係、を引き続き調べる。上記の測定は、申請者に経験があるため特に問題は無い。
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次年度使用額が生じた理由 |
20,517円の次年度への繰越金が出た。これは、購入予定であった物品に関して、予定よりも価格が安価であったり、数量が少なくて済んだためである。ただし、これによる研究遅延はない。また、比較的少額であるため次年度の予算使用計画についても大きな変更はない。
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