樹木は光合成で得た炭素のうちの相当量を、根とそれに共生する菌根菌に呼吸基質として配分している。こうした根圏呼吸の理解は、温暖化応答予測や物質循環の解明に欠かせない。菌根菌呼吸はこれまで、測定の技術的困難さにより根呼吸と一括りにされほとんど無視されてきた。しかし、菌根菌と根ではサイズや生理機構が全く異なるため、呼吸の環境応答特性は両者で異なると考えられる。また菌根菌呼吸は、宿主樹木の生活型(常緑・落葉)によっても変化すると考えられる。そこで本研究は、先端根圏における菌根菌呼吸測定手法の開発、2. 菌根菌呼吸に及ぼす宿主樹木の生活型(常緑・落葉)の影響を明らかにすることを目的とした。 コナラ(落葉)とスダジイ(常緑)の先端根(直径2mm未満の1-3次根)を掘り出し、洗浄、シリコン栓に挟んでシリンジ内に挿入し、ガラスビーズと炭素フリーの培養液(微量の必須元素と細菌阻害剤クロラムフェニコールを混合)を入れた。2つのシリンジを用意し、片方には培養液に真菌殺菌剤シクロヘキシミドを混ぜて菌根菌を殺す処理(根呼吸)、もう片方は無処理とし(根+菌根菌呼吸)、差分値から菌根菌呼吸を算出した。予備的に、培養時に有効な抗細菌剤および抗真菌剤の濃度を検討した。 その結果、両種間で菌根菌呼吸に差が見られた。当初、単位時間当たりの光合成速度が速いと考えられるコナラの方が菌根菌呼吸は速いと考えていたが、スダジイの方が高いことが多かった。また、日中高く夕方に下がる、日変化を捉えることもできた。根圏呼吸に対する菌根菌呼吸の寄与率を10-20%と算出できた。
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