研究課題/領域番号 |
19K06133
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
長谷川 元洋 同志社大学, 理工学部, 教授 (70343811)
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研究分担者 |
豊田 鮎 香川大学, 農学部, 准教授 (50730800)
原口 岳 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 研究員(任期付) (90721407)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土壌動物 / 撹乱 / 安定同位体 / トビムシ / ササラダニ |
研究実績の概要 |
土壌動物の食性などの機能が撹乱に対してどのように変化するのはあまりわかっていない。イノシシは地下茎や根、土壌動物といった地下部の餌を探索する際、林床を攪乱する。土壌動物の炭素・窒素安定同位体比は住み場の落葉の分解や栄養段階の上昇に従い濃縮される。従って撹乱に伴う安定同位体比の変化は、土壌動物の機能や食性の変化を反映すると考えられる。本研究の目的はイノシシの侵入を操作した区間で土壌動物の群集構造と炭素・窒素安定同位体比を比較し、イノシシの撹乱が土壌動物群集に与える影響を把握することである。 高知県土佐清水市の佐田山国有林の調査地内に、イノシシ排除区として10 mおきにステンレス網かご(40 cm×35 cm)を10点設置した。網かごから2 m以内にイノシシが自由に侵入できる2 m×2 mの対照区を定めた。網かご設置直前と設置2年後に各区で土壌コア(25 cm2×深さ5 cm)を2個ずつ採取し、中型土壌動物を抽出し、トビムシ、トゲダニ、ササラダニの個体数を計数した。トビムシは種レベルの同定を行った。また、土壌動物と堆積落葉(2 mmメッシュ以上)の炭素・窒素安定同位体比を測定した。 設置2年後において、上記各分類群の個体数はイノシシ排除区で有意に多かった。また、冗長分析で処理区間のトビムシの種組成の差異を解析した結果、設置直前には有意な差はみられず、設置2年後でのみ有意差が認められた。安定同位体比の比較では、トビムシ、トゲダニにおいて安定同位体比は有意な差は認められ無かったが、ササラダニの窒素安定同位体比(δ15N)は設置2年後のイノシシ排除区で有意に高かった。以上よりイノシシの林床撹乱は土壌動物の個体数に負の影響を与え、質的変化ももたらすことが考えられた。また撹乱に伴う土壌の攪拌で、植物遺体食者を含むササラダニは未分解のδ15Nが低いリターの摂食頻度が増加したと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高知での野外実験におけるサンプル採取および、安定同位体の計測も無事終了し、当初予定通り順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はこれまでのデータを論文作成に向けて整理するとともに、補足データを取ることを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
商品購入の端数として、228円が余剰として生じた。次年度の消耗品費に追加して使用する予定である。
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