研究課題/領域番号 |
19K06134
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
小川 泰浩 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (50353628)
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研究分担者 |
上條 隆志 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10301079)
廣田 充 筑波大学, 生命環境系, 教授 (90391151)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 三宅島 / 水路実験 / リル / リル間地 / 粗度係数 |
研究実績の概要 |
噴火が終了して21年が経過した三宅島の傾斜12~31度の荒廃斜面において流水実験を6箇所で行い、リルの植物定着が斜面の水流出に与える影響を検討した。測定場所は植生(ハチジョウススキ)の定着したリル3箇所と植生が定着していないリル間地3箇所である。実験の測定項目は流速および水路末端から流出する水と土砂の量である。今回の実験条件では、6箇所で回収された流出水に流出土砂がほとんど含まれていなかった。実験水路に流入させた流量は、リルが8~11 (リットル/min)、リル間地が2~5 (リットル/min)であった。リルはリル間地と異なり植生回復しているため、植生回復によってリルの浸透能が高まっていることが明らかになった。出水の平均流速は、リルが0.03~0.09 (m/sec)、リル間地が0.06 (m/sec)であった。マニングの粗度係数は、リルが0.11~0.36、リル間地が0.13~0.15であった。値にばらつきはあるが植生のあるリルの粗度係数は、リル間地よりも高い値を示し、植生のあるリルでは、三宅島2000年噴火から約1年後に行なわれた緑化試験地の流水実験(阿部ら,2002)の値(0.09と0.14)よりも高い値であった。なおリル間地の1か所では12リットル/分という最大に給水しても水路末端から出水が計測できなかった。この出水が計測できなかった傾斜20度の水路では、供給水の流量を細粒火砕物が堆積していた時期の荒廃斜面(傾斜18度)の流水実験(阿部ら,2002)よりも4倍以上与えていた。このような出水のない水路の実験結果から、荒廃斜面において浸透能の部分的な上昇が示唆された。リルの浸透量が噴火当時と比べて上昇していることから、パイオニア植物の種子がリルを経由して下流に流水とともに流されずに種子がリルに留まりやすくなっていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植生が回復したリルにおいて水路実験が予定通りできたため概ね順調に進展している。資材を置いた状態の流水の状況を実験的に明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
リルにおける水路実験の結果から、植生回復したリルに資材を設置すればリルがさらに安定化し、植物生育基盤が早期に形成されることが推察された。次年度の資材を置いた水路実験で検証し成果を取りまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本土よりも降水量や台風の襲来が多い海洋島の三宅島では現地流水実験の準備などの日程を長めに確保する必要があり、現地に向かう頻度や日数が多くなることが想定されていた。令和3年度は、実験開始前の天候が安定しており、現地実験準備の旅費が計画よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。令和4年度の流水実験旅費や資材等の購入に使用する予定である。
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