最終年度は様々な分類群の樹木が生育する小笠原諸島の固有種および様々な気候帯に分布する同一樹種の種子の乾燥耐性と種子形質を調べた結果、乾燥耐性推定モデルの精度向上が期待された。 樹木種子における乾燥耐性の重要性を明らかにするために、様々な分類群に属する樹木種子の乾燥耐性を種間で比較し、種子の形態的な特徴から乾燥耐性の程度を予測する高精度の推定モデルを作成した。本年度は様々な分類群の樹木が生育する小笠原諸島の固有種について種子の乾燥耐性を明らかにした。また、様々な気候帯に広範囲で生育する樹種に着目し、種子の乾燥耐性と発芽タイミングを同種の集団間で比較し、生育地の環境要因との関係を調べた。具体的には様々な気候帯に生育する樹木種ウワミズザクラなどについて国内の複数集団から採取した種子の形質と発芽特性を比較したところ、種子の形質について集団間で違いがみられ、これらの違いには降水量などの気象要因が関係することを明らかにした。 期間全体の成果として、国内に生育する様々な樹木の種子を用いて種子形質から乾燥耐性を予測するモデルを作成し、このモデルを活用し種子特性の種内変異を調べた結果、気象要因との関係が明らかとなり環境適応の可能性が示唆された。 150種を超える樹種について種子の形質を計測した。これらの樹種について既報モデルで乾燥耐性の推定を行い、データベースや乾燥実験から得られた実際の乾燥耐性の情報と比較を行った。多くの樹種については乾燥耐性の推定が可能であったが、推定できなかった樹種もあったことから、生育地の気象要因を考慮し、一般化線形モデルを活用して種子の乾燥耐性の推定精度の向上を検討した。また、国内に広く分布するウワミズザクラ等の樹種について、種子の形質と発芽特性における地理的変異を明らかにした。また、この違いと降水量との間には相関がみられ、環境適応が示唆される結果を得た。
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