研究課題/領域番号 |
19K06149
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
小栗 恵美子 首都大学東京, 理学研究科, 客員研究員 (10608954)
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研究分担者 |
田金 秀一郎 鹿児島大学, 総合研究博物館, 特任助教 (10616080)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植物多様性 / 植物分類 / 種同定 / 新種 / DNAバーコード / 分子系統 |
研究実績の概要 |
生物多様性を保全するためには、その基盤となる生物相の情報を正しく理解し、自然保護地域を適切に管理していくことが必要不可欠である。ベトナムは東南アジアでも有数の生物多様性の豊かな国であるが、植物相はまだ十分に把握されているとは言えず、実際に毎年数多くの新種が記載され続けている。我々は、ベトナムの植物相の解明を目的として、2019年8月に、ベトナム中部高原地帯ザライ省のKon Chu Rang自然保護区およびKon Ka Kinh国立公園で、ベルトトランセクト法による網羅的な維管束植物相調査を行い、これらの自然保護区における植物多様性を評価した。調査方法は、100 m x 5 mのベルトトランセクト法を用いて、出現したすべての維管束植物について、生態写真と遺伝子解析用試料とともに証拠標本を収集した。また、地域の植物相を網羅的に把握するため、ベルトトランセクト調査区外に生育する植物についても、可能な限り同様に採集を行った。 ベルトトランセクトの結果、Kon Chu Rang自然保護区では標高920mに設置した調査区で258種、標高905mのKon Ka Kinh国立公園では188種の維管束植物種の出現が確認された。今回の調査を通じて得られた維管束植物は、Kon Chu Rang自然保護区では469点、Kon Ka Kinh国立公園では381点だった。 また、本研究で新種と思われる種を採集した。Lasianthus属については、共同研究者が執筆し、専門誌に投稿した。Symplocos属は、現在、比較形態、分子系統解析を行い、論文投稿の準備をしている。 本研究では、得られた標本を用いてDNAバーコーディングも必要に応じて行う予定である。2019年8月に採集した標本856点のうち、約100点からDNAを抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は2019年度に2回(8月と3月)、ベトナム中部高原地帯ザライ省のCon Chu Rang自然保護区とKon Ka Kinh国立公園で野外調査を行う予定だった。2019年8月は13日間の日程で、これらの公園の調査を遂行することができたが、2020年3月は、コロナウイルス感染拡大の影響で国外へ行くことができなかった。しかし、2019年8月の調査では、856点の維管束植物の標本を採集しているので、これらの標本についてこれまで同定作業を進めている。その過程で、新種と思われるものをいくつか発見し、記載論文を執筆、投稿まで行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に採集した維管束植物標本850点の同定作業を進める。さらに、採集したすべての植物の遺伝子解析用サンプルからDNAを抽出し、2020年度中に、2019年度に採集したもののDNA抽出作業は完了させる予定である。 今年度のベトナムザライ省のKon Chu Rang自然保護区とKon Ka Kinh国立公園での野外調査は、2019年度末から引き続き、国内外のコロナウイルス感染の影響を見ながら実施することになるが、可能な限り異なるシーズンでの野外調査を実施する予定である。野外調査の予定としては、2020年度は2回、行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に2週間程度の日程でベトナムザライ省Kon Chu Rang自然保護区およびKon Ka Kinh国立公園で野外調査を行う予定だったが、コロナウイルス感染の影響で調査を断念した。今年度、本調査地で調査が行える段階に移行したら、速やかに野外調査を行う予定である。
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