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2019 年度 実施状況報告書

ニホンジカの高密度から低密度への過程におけるレガシー効果をもたらす要因の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K06151
研究機関名城大学

研究代表者

日野 輝明  名城大学, 農学部, 教授 (80212166)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードニホンジカ / ミヤコザサ / 森林再生 / レガシー効果
研究実績の概要

糞の数から推定されるニホンジカの密度は,地点によって違いはあるものの,2006-2008年に比べて30~80%減少していた.それにともなって,ミヤコザサの現存量は,最大2倍にまで増加していた.その結果,2006-2008年にはシカ密度と下層植生の現存量との間には有意な相関関係があり,両者間には平衡状態にあることが示されたが,現在では相関関係がなく平衡状態にないことが示された.下層がミヤコザサ群落の地点では,現存量の増加に伴い樹木実生の生存率は,シカの個体数減少にも関わらず,2006-2008年に比べて減少していた.しかしながら,林床が裸地か忌避植物のシキミが優先する地点では,実生の生存率と成長の増加が顕著であった.ネズミの種類数と個体数は,ミヤコザサ群落では,ササ現存量の増加に伴って個体数のわずかな増加が見られたのに対して,オサムシでは減少していた.また下層植生に依存する鳥についても個体数の増加が見られた.したがって,シカの個体数の減少はササ現存量の増加によって,個体数を増加させる種類もあったが限定的であった.ミヤコザサ群落以外の地点では,いずれの動物においても変化は見られなかった.したがって,シカ個体数の減少による生態系回復の効果は,下層植生の違いによって異なることが分かった.現在のシカの低密度は捕獲による個体数調整の結果であるため,捕獲をやめてしまえば,餌となる資源量が増加しているため,2006-2008年の時以上にシカの個体数が増えてしまう可能性が高いことも示唆された.これらの結果から,シカの個体数調整は継続するとともに,その効果を発揮させるためには,ミヤコザサの現存量の増加を抑えるための何らかの対策(葉の刈り払い等)が必要である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2006-2008年に調査を行った9地点のうち8地点で現状調査を行い,現在との違いを把握することができた.シカによる採食の影響を調べるための採食除去柵の設置を初年度に予定していが,その前に現状調査のための予備調査が必要と考えて,設置は次年度に行うことにした.

今後の研究の推進方策

予定では,4月下旬にシカの採食排除柵を設置を行い,2ヶ月おきに5泊6日の調査を行う.今年度の予備調査から,全行程の調査を実施するにためには,予定していたは9地点全てで調査を行うのは日程的に難しいと考えられたため,諸条件を勘案して1点を除く8地点で行うことに変更した.

新型コロナ対策のために出張禁止となり,4月に予定していた防鹿柵設置ができていない.下層植生の成長やシカの行動をを考慮すると,遅くても5月中には採食排除柵の設置を行う必要がある.もし出張調査期間が長引くようであれば,柵の設置は来年度に延期し,それ以外の調査を可能な範囲で実施する.それでもシカ密度の影響を調べることはできるので,研究目的に応じた分析は可能である.

次年度使用額が生じた理由

初年度にシカ採食除去柵の設置予定していたが,現状把握のための予備調査を優先して,設置を次年度に延期した.そのため,予算に計上していた柵設置のための材料費と謝金,予定縮小した調査のための旅費と謝金が未使用となり,次年度使用額が生じた.次年度は,柵設置,5泊6日の4回の調査,研究補助のアルバイト雇用を行うことで,今年度の分と合わせて助成金を使用する予定である.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] How does Japanese Water Shrews Chimarrogale platycephalus cross the concrete walls of check dams?2019

    • 著者名/発表者名
      Saito H, Hashimoto H, Hino T, Motokawa M
    • 雑誌名

      Mammal Study

      巻: 44 ページ: 1-11

    • DOI

      10.3106/ms2017-0056

    • 査読あり

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公開日: 2021-01-27  

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