研究課題/領域番号 |
19K06152
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
末吉 昌宏 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80435586)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スギ人工林 / 生物多様性 / 害虫防除 / 群集構造 / 生物間相互作用 |
研究実績の概要 |
2021年2月から2021年6月までの間、月1回現地に設置した14箇所の調査地で調査を行った。シイタケ害虫ナカモンナミキノコバエ(以下ナカモン)に対する、寄生蜂による寄生率、クモ類による捕獲効率の解明を試みた。 調査地のホダ場で採集したシイタケ子実体から377個体の幼虫を得て、害虫種とその寄生蜂の羽化に供した。その結果、41個体のナカモンと、寄生蜂として2個体のハエヤドリクロバチ科オオハエヤドリクロバチ亜科(以下オオヤドリ)が羽化した。 各調査地で月1回10分間捕虫網を使って、キノコバエ類と寄生蜂を採集した結果、ナカモン4個体およびその寄生蜂であるシリボソクロバチ科(Mischoserphus aculator)(以下シリボソ)1個体を得た。各調査地に水盤トラップ4基を各月4日間設置した結果、ナカモン、シリボソともに得られず、オオヤドリを258個体得た。各調査地に粘着シートトラップを4日間設置した結果、541個体のナカモンを得たが、シリボソは得られず、オオヤドリを31個体得た。水盤・粘着シートトラップで得られた寄生蜂のサンプル数を森林タイプ間で比較すると、ホダ場の有無に関わらず、スギ林よりも広葉樹林で多い傾向があった。 調査地で2620ケのクモ類の巣網を観察し、174ケの巣網にかかった昆虫類202ケのサンプルを得た。これらのサンプル数の半数以上が4月に採集され、巣網総数の6割がコシロカネグモのものであった。ナカモン1個体、寄生蜂13個体が採集された。寄生蜂のうちコマユバチ科が9個体を占め、シリボソとオオヤドリは得られなかった。各調査地で得られた総サンプル数を各調査地で観察した巣網数で平準化し、森林タイプおよびホダ場の有無で比較すると広葉樹林、スギ林、広葉樹林(ホダ場)、スギ林(ホダ場)それぞれで0.11、0.05、0.11、0.08であり、スギ林よりも広葉樹林で多い傾向があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り、試験地の設定、サンプルの回収を行った。本課題の成果を国際昆虫学会(フィンランド・ヘルシンキ)で発表予定であったが、その開催がR2年7月からR3年7月に延期され、さらにR4年7月に延期された。また、本課題で採集されたクロバネキノコバエ類を同定するため、国際昆虫学会と同時期にドイツ昆虫学研究所(ドイツ・ミュンチェベルク)を訪問する計画であったが、新型コロナウイルス感染拡大により、海外出張が停止されていた。これらの計画を今年度内に完遂できなかったため、R3年度完了予定であった本課題の研究期間をR4年度まで延長する。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の成果をR2年7月に開催予定であった国際昆虫学会(フィンランド・ヘルシンキ)で発表する計画であった。また、クロバネキノコバエ類の同定のため、ドイツ昆虫学研究所訪問する計画であった。国際昆虫学会はR4年7月に開催変更となり、同時期にドイツ昆虫学研究所を訪問を計画している。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大収束、R4年2月に開始されたロシア軍によるウクライナ侵攻の停戦にまだ見通しがつかない。世界情勢の推移を見極めて、これらの計画推進を判断する。渡航を中止する場合は、調査地外での天敵寄生蜂による寄生率や分布を明らかにするため、海外旅費をこれら調査に必要な国内旅費に充てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際昆虫学会で成果発表予定であったが、その開催がR2年7月からR3年7月に延期され、さらにR4年7月に延期された。また、本課題で採集されたクロバネキノコバエ類を同定するため、国際昆虫学会と同時期にドイツ昆虫学研究所(ドイツ・ミュンチェベルク)を訪問する計画であったが、新型コロナウイルス感染拡大により、海外出張が停止されていた。これらの計画を今年度内に完遂できなかった。研究期間をR4年度まで延長し、これらの海外旅費の支出を計画する。また、世界情勢の推移を判断した結果、これらの海外出張を中止する場合は国内旅費として計画変更する。
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