| 研究課題/領域番号 |
19K06160
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| 研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
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研究代表者 |
遠藤 力也 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 研究員 (90634494)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 酵母生態 / 微生物資源 / 樹液 / フルクトース |
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| 研究実績の概要 |
初夏～秋に、コナラやクヌギの樹幹に樹液が滲出している様子はよく観察される。樹液から様々な酵母が分離されることは半世紀以上前から海外で報告されているが、樹液中の酵母（樹液酵母）の存在量について定量的なデータが乏しく、国内で詳細に解析した研究も無い。我が国の森林における「樹液酵母」とは何か解明するため、2019年度には樹液から菌類を分離し菌種の特定と存在量の定量を行った。2020年度は2019年度の結果の再現性を確認する予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で研究の進捗が滞った。2021年度は再度樹液から菌類を分離し菌種の特定と存在量の定量を行うとともに、樹液のpH測定、樹液に含まれるグルコース・フルクトース・エタノールの測定を実施した。
2021年7月に採取したコナラ樹液6サンプルからの菌類分離実験の結果、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces paradoxus、Schizosaccharomyces japonicus、Starmerella stellata、Zygotorulaspora cornina、Hanseniaspora vineaeといった子嚢菌酵母が優占していた。樹液1uL中におけるコロニー形成単位（CFU）は3800-98000で、樹液酵母群集の種組成とともに大きなばらつきがあった。また、樹液のpHは4.2-5.7、グルコース濃度は0.2-17.7 g/L、フルクトース濃度は0.0-37.9 g/L、エタノール濃度は 約6-50 g/Lであり、これらにも大きなばらつきがあった。
樹液サンプルごとに酵母群集の種組成にばらつきがあることは、2019年の菌類分離実験と同様の結果だった。群集中の種構成にサンプル間でばらつきはあるものの、コナラ・ミズナラの樹液で優占し得る酵母種は10種程度であり、これらが樹液酵母の正体であると考えられる。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症（Covid-19）の拡大に伴って、2020年4月～8月にかけて所属機関から在宅勤務命令と出勤制限を受けた。それゆえ、ラボでの現場勤務時間が喪失（平日3～4か月分に相当）し、通常業務が逼迫したことで本課題遂行に充分な研究時間を確保できなかった。加えて、Covid-19拡大抑止の観点から、県をまたいだ移動の自粛を余儀なくされ、2020年度中のサンプリングおよび現地調査の機会が喪失した。以上の窮状から、本課題の進捗状況は当初計画より遅れている。2021年度は社会情勢等が改善したものの、研究進捗状況の挽回には至っていない。このことから本課題の研究期間延長を申請した。
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| 今後の研究の推進方策 |
本課題の遂行には、樹液の野外調査・採集活動が必須である。Covid-19の感染が拡大している地域への往来を避けつつ、感染対策を徹底したうえで、なるべく単独行動にて野外調査・採集を実施する。
2022年度は樹液酵母の種組成に関して地域差の有無を検討する予定であり、樹液のサンプリング地を増やすべく他県の研究者とコンタクトをとり、サンプリングの準備に着手している。また、好樹液性昆虫の虫体から酵母を分離し、樹液酵母の生活史全容解明を目指す。樹液に成立する酵母群集の種組成、pH、糖類やエタノールの濃度と、樹液を訪れる好樹液性昆虫の種類相にどのような関係があるか解明することが今後の課題である。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症（Covid-19）の拡大に伴って、2020年度4月～8月にかけて所属機関から在宅勤務命令と出勤制限を受けた。それゆえ、ラボでの現場勤務時間が喪失（平日3～4か月分に相当）し、通常業務が逼迫したことで本課題遂行に充分な研究時間を確保できなかった。加えて、Covid-19拡大抑止の観点から、県をまたいだ移動の自粛を余儀なくされ、2020年度中のサンプリングおよび現地調査の機会が喪失した。また、エントリーを予定していた国際学会・国内学会が中止となり、計上していた参加・出張費用が不要となった。2021年度も引き続き国際学会・国内学会がオンライン開催となり、当初予定していた経費が浮く状況が継続した。
2022年度は、2021年度以上に状況が改善し、野外調査・サンプリングがより実施しやすくなると見込まれる。本課題の研究期間を1年延長し、2022年度も研究遂行が可能になったため、繰り越した研究費を野外調査・サンプリングおよび試薬・理化学機器・消耗品代に充てて最大限有効に活用し、樹液酵母の生態解明を目指す。
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