研究課題/領域番号 |
19K06161
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
重冨 顕吾 北海道大学, 農学研究院, 講師 (20547202)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ベラトリルアルコール / 白色腐朽菌 / フェニルアラニン |
研究実績の概要 |
本年は白色腐朽菌におけるベラトリルアルコール(VA)生合成機構の解明を目的とし、投与実験に必要な生合成前駆体の分子プローブの合成を主に行った。既往のVA生合成経路としてL-フェニルアラニン(Phe)からケイヒ酸を経由するルートが提唱されているが、L-チロシン(Tyr)については検討された報告が無いこと、生合成エネルギーはPheよりもTyrの方がローコストであることを考慮し、本研究では生合成前駆体としてTyrについても検討に加えることとした。研究戦略として前駆体投与実験の後にLC-MSで生合成中間体を補足することを企図した。このため、一定の分子量分布を持つ重水素化前駆体を調製した。PheならびにTyrの重水素化はTfOD法(橋本ら)により行った。橋本らの原法では40当量のTfODを用いていたが、本研究では当量の削減について検討した。その結果、それぞれの前駆体に対して7.5当量のTfOFを加えることで、Pheに関しては環重水素化率65%でPhe-d1からd5の分布を持つ成績体、Tyrに関しては環重水素化率56%でTyr-d0からd3の分布を持つ成績体を得ることに成功した。これらはマルチグラムスケールで調製可能であり、また、VA変換後のメトキシ化を考慮しても十分な重水素化がなされているため、前駆体投与実験における要求を満たすと考えられる。また、ケイヒ酸の重水素化についても検討を行った。ケイヒ酸のTfOD法や佐治木らのD2O/PdC法による直接重水素化、もしくはバニリンの間接重水素化について検討を行ったが、目的とする重水素化体は得られなかった。また、投与実験のため前駆体投与とVA生産のタイムコースについても検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前駆体投与実験の前実験において菌株の状態が整わず、保有する菌株のVA生合成が確認できなくなったため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、保有する菌株のベラトリルアルコール生合成能が低下しているため、その培養条件の検討もしくは菌株のATCCからの再調達を行う。然る後にフェニルアラニンの投与とVA生産のタイムコースについて検討し、同様の処理を重水素化フェニルアラニン、チロシンで行う。得られたブロスをLC-MSで分析することにより、投与した重水素化物がどのように代謝産物(VA前駆体)に変換されているかを検証する。またこの際、フェニルアラニン/チロシンの交差投与を行って前駆体としての嗜好性を検証する。同時にVA生産期の遺伝子発現をRNAseqによって解析し、生合成に関わる酵素の推定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により研究が一部制限されたため。また、菌株のベラトリルアルコール生産性が低下し、予定していた遺伝子発現解析まで到達できなかったため。
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