シイタケ菌床栽培では収穫後の廃菌床の有効活用が課題である。木材チップが菌床の場合、廃菌床を乾燥するとレンガ状のブロックが採取できる。本研究は断熱材としての利用の可能性を探るため、廃菌床の気乾密度が熱伝導率および強度性能に及ぼす影響、断熱性の発現メカニズム、半炭化処理による断熱性改善の可能性、以上の3項目を検討した。 まず、廃菌床の厚さ方向を数段階に圧縮して乾燥し、密度150~300 kg/m3における強度性能(剥離強度・圧縮強度性能)および熱伝導率を調べた。構造が類似する軟質繊維板(T級IFB:密度約250 kg/m3)と同密度で比較した場合、剥離強度は約半分の26kPa程度、圧縮弾性率は約1/2~2/3の1.5MPa程度、熱伝導率は約1割大きい0.052W/mK程度であった。半炭化に関しては、強度低下と断熱性向上の基礎知見を得るため、木材を270~300℃で半炭化させた。質量減少率20%程度に達すると約15%の熱伝導率低下が認められたが、圧縮強度とせん断強度は半減した。この結果より、もともと強度性能が低い廃菌床への半炭化処理は不適と判断され、別の手段による断熱性向上が必要と考えられた。 そこで最終年度(令和3年度)は、断熱性低下の主要因となる廃菌床内の粗空隙に着目し、粗空隙が消滅する程度まで圧縮乾燥を行い、密度範囲150~600kg/m3における機械的性質および熱伝導率の変化を調べた。密度増加に伴って圧縮弾性率は二次曲線的に増加したが、剥離強度の増加は僅かであった。一方、熱伝導率の密度依存性は木材の半分程度と低く、密度500㎏/m3の廃菌床の熱伝導率は0.06W/mK程度で、木材よりも1~2割低かった。実質と空隙の2要素で構成される直列並列の熱伝導モデルを廃菌床に適用した結果、密度300㎏/m3を超えると廃菌床内の空隙が静止空気と扱えることが分かった。
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