研究実績の概要 |
オオバクロモジから誘導したカルス細胞に,ジャスモン酸,ジャスモン酸メチル等のエリシターを添加して培養し,テルペン成分の産生が見られるか検討した。しかしながらリナロール等の特徴的な成分は検出されなかった。初年度検討した無菌苗の結果と合わせて考察すると,リナロール等のテルペン類の産生は葉,茎等に分化した後にそれぞれの部位で産生されることが示唆された。一方,生木のオオバクロモジの幹および枝部を詳細に分析したところ,比較的細い径の幹の樹皮や表皮のリナロールは+体の比率が大きく,大径の幹の樹皮はリナロールの光学異性体比がラセミに近づくことが示された。また,雪害等で傷害を受けた部位の回復部の樹皮では-体の比率が多くなることが示された。また,タムシバについてもオオバクロモジと同様の分析を行ったところ,タムシバの細枝, 小枝, 樹幹でα-pineneとterpinen-4-ol,α-terpineolの光学異性体比が健全部と傷害部で異なることが示された。 タムシバに加え,昨年度に引き続き,オオバクロモジ以外の低木類として,クロモジ属のアブラチャン,ダンコウバイ,シロモジのサンプルを入手し,枝部と葉部についてテルペノイド成分を分析した。GC-MS分析の結果,3樹種全てで葉,枝において成分組成は異なっており、また同じ部位でも個体によって含有割合に差がある成分が見られた。しかしながら,クロモジにおけるリナロールのように光学異性体を部位間で顕著に逆転して含有されている成分は検出されなかった。
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