研究実績の概要 |
きのこ類に含まれるβ-1,6グルカンは免疫活性化機能を持つ。しかしながら、きのこ類からの単離・精製は困難である。マクロファージ様細胞(RAW264.7)からのβ-1,6-グルカン受容体を同定するためには、純粋なβ-1,6グルカンの調製が必要である。そこで、2つの手法でβ-1,6グルカンの取得を進めた。一つ目の手法として、真菌類からβ-1,6グルカンを抽出した。シイタケおよびイワタケの子実体から熱水抽出物またはアルカリ抽出物を調製し、エタノール沈殿等で高分子画分を得た。さらに、β-1,3-グルカナーゼで処理することで、β-1,3-グルカン部分を除去した。得られた生成物が基質特異性の高いβ-1,6-グルカナーゼで酵素分解されることを確認した。よって、β-1,6-グルカンであると考えられ、β-1,6-グルカンオリゴ糖の調製も可能であることを示すことができた。2つ目の手法として、β-1,6グルカン分解酵素(グルカナーゼ)の合成酵素への変換を行った。スエヒロタケ(Schizophyllum commune)およびウシグソヒトヨタケ(Coprinopsis cinerea)由来のβ-1,6-グルカナーゼのれぞれ活性中心残基のグルタミン酸をグリシン、アラニン、セリンにそれぞれ変換し得られた合成酵素を作成し、リコンビナントタンパク質をこうじ菌を用いて異種発現させ精製した。。得られた酵素をそれぞれ100mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)、20mMフッ化ゲンチオビオース、20℃、48hの条件で反応させた。生成物を検出したところ、収量は少ない物の2糖以上のオリゴ糖と多糖が検出でき、β-1,6-グルカンの合成に成功したと考えられた。現在、得られた生成物の構造解析とRAW264.7を用いた機能性評価を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度までの実験で調製することができたβ-1,6-グルカンを用い機能性試験行う。β-1,3-グルカン、β-1,6-グルカンおよびβ-1,3/1,6-グルカンでそれぞれ処理したRAW264.7細胞を回収し、RNAシークエンスを行う。発現している遺伝子群を比較することでβ-1,6-グルカン受容体の同定につなげる。また、大量培養した細胞からタンパク質群を抽出し、β-1,6-グルカン結合能を持つタンパク質を各種クロマトグラフィーを用いて精製する。
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