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2022 年度 実施状況報告書

きのこβ-1,6-グルカンを認識する新規受容体の同定

研究課題

研究課題/領域番号 19K06166
研究機関宇都宮大学

研究代表者

金野 尚武  宇都宮大学, 農学部, 准教授 (60549880)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワードβ-グルカン / 免疫賦活 / きのこ
研究実績の概要

これまでのマクロファージ様細胞(RAW264.7)を用いた細胞試験から、β-1,6-グルカンはβ-1,3-グルカンよりも高い免疫賦活機能を持つ可能性が示唆された。実際にイワタケ熱水抽出物(主にβ-1,6グルカンを含む)が海藻由来のラミナリン(β-1,3グルカンを含む)よりも高いTNFαの発現を示した。しかしながら、イワタケ由来のβ-1,6-グルカンは水への溶解性が低くゲル化しやすい傾向が認められ、カラムでの分離や各種試験に用いることも困難であった。そこで、担子菌(Coprinopsis cinerea)由来のβ-1,6-グルカナーゼを、麹菌を用いて異種発現することで組み換え酵素を取得し、本酵素でイワタケ熱水抽出物を処理することで低分子化することにした。本酵素は、β-1,6-グルカンに高い基質特異性をもち、高分子を分解する一方で、オリゴ糖への活性は低いという特徴をもつ。これらのことから、イワタケ由来β-1,6-グルカンを基質に用いて酵素分解させることで、各重合度のβ-1,6-グルカンオリゴ糖を調製することができた。酵素分解生成物をサイズ排除クロマトグラフィーを用いて分子量ごとに分画した。これらの糖サンプルにおける免疫賦活機能を評価したところ、分離したオリゴ糖が、酵素分解前の多糖よりも高い活性を示した。質量分析を行ったところ、活性の高いフラクションには5糖、6糖、7糖が主に含まれることが明らかになった。また、アルカリ処理による不純物や官能基の除去を行ったところ、免疫賦活性が低下した。これは脱アセチル化により水素結合が強化し、溶解性が低下した影響であると考えられた。以上のことから、免疫賦活機能には、β-1,6-グルカンオリゴ糖の重合度、純度、溶解性が重要であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

イワタケ由来のβ-1,6-グルカンは水への溶解性が低くゲル化しやすい傾向が認められ、カラムでの分離や各種試験に用いることも困難であったこともあり、材料調製に時間がかかっていたが、β-1,6-グルカナーゼを取得し、本酵素でイワタケ熱水抽出物を処理することで低分子化することにした。また、低分子化物も免疫賦活機能を示すことが明らかになり良好な結果が得られている。また、β-1,6-グルカン受容体候補遺伝子の特定のため、β-1,6-グルカンとβ-1,3-グルカンをそれぞれRAW264.7細胞試験に供し、RNAシークエンスを行っている。すでにサンプル調製とシークエンスは終了しており、現在データ解析を進めているため、概ね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

β-1,6-グルカンとβ-1,3-グルカンをそれぞれRAW264.7細胞試験に供しRNAシークエンスを行い、発現する遺伝子群を比較する。β-1,6-グルカン受容体候補遺伝子およびβ-1,6-グルカンによって特異的に発現量が上昇する遺伝子群を明らかにする。すでにサンプル調製とシークエンスは終了しており、現在データ解析を進めている。さらに、免疫賦活機能を示すβ-1,6-グルカンオリゴ糖の最小単位についても明らかにし、β-1,6-グルカン受容体との結合について考察する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍のためグルカン材料の調製と細胞試験が遅れてしまい、RNAシークエンスのデータ解析が終了しなかった。RNAシークエンスの解析結果をもとにβ-1,6-グルカン受容体候補遺伝子に関する実験を行う予定のため、そのための費用を繰り越すことにした。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Extracellular enzymes secreted in the mycelial block of Lentinula edodes during hyphal growth2023

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Nanae、Wada Nagisa、Yokoyama Haruna、Tanaka Yuki、Suzuki Tomohiro、Habu Naoto、Konno Naotake
    • 雑誌名

      AMB Express

      巻: 13 ページ: 36

    • DOI

      10.1186/s13568-023-01547-6

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Pectin decomposition at the early stage of brown-rot decay by <i>Fomitopsis palustris</i>2023

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Yuki、Nezu Ikumi、Aiso Haruna、Fujie Tomomi、Konno Naotake、Suzuki Tomohiro、Ishiguri Futoshi、Habu Naoto
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 87 ページ: 555~562

    • DOI

      10.1093/bbb/zbad014

    • 査読あり
  • [学会発表] きのこ由来のキチン分解酵素2022

    • 著者名/発表者名
      金野尚武、坂本裕一
    • 学会等名
      第36 回日本キチン・キトサン学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 真菌類由来β-1,6-グルカンを活用した機能性素材開発2022

    • 著者名/発表者名
      横山陽奈、金野尚武、羽生直人
    • 学会等名
      日本きのこ学会第25回大会
  • [学会発表] シイタケ菌床における菌糸の成熟度での分泌酵素の違い2022

    • 著者名/発表者名
      小林菜々恵、金野尚武、羽生直人
    • 学会等名
      日本きのこ学会第25回大会

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公開日: 2023-12-25  

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